第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
縄にしがみついた者は、振り回されて飛ばされた。
木に打ち付けられる前に手を離す。
捕縄が解けてしまった。
それでもテンギは現象を起こす以外の発動を知らない。
騎士たちを狙って炎を放つ。
焼かれないためには身でかわすしかない。
せっかく捕らえたものを、散り散りにされた。
「攻めるか、退くか・・・!?」
「時間を稼ごう。
住民に危害が及ばなければいい。
タフツァ殿の到着まで。」
四散したため、近くの者が標的にされる。
バグティムトとダジースカイが最も近かった。
体力と盾に利がある騎士長が、引きの意思を伝えて立ち塞がった。
とても押してはいけないので、飽くまで引っ張るのだ。
連続攻撃は常に五、六回である。
ガタン、ドゴン、ガン、ズシン、ズゴン、・・・。
騎士団の盾を破ることはないだろう。
しかし打たれる腕は堪(たま)らない。
盾を引いて威力を軽減し続けた。
バグティムトは仲間の心強さに息を整えて、再び打って出た。
“LIFE”の魔法陣の、なんとよく効くことか。
横殴りに打ち込んだだけで、テンギが倒れそうになる。
拳と拳が当たっても、まだこちらに威力があった。