第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
剛力の格闘部隊である。
テンギと言えど十の腕を取り押さえられると起き上がれない。
激しく脚をばたつかせて抵抗している。
蹴られでもしたら極めて危険だ。
このままでは振り払われる。
「バグティムト!
よくそんな巨体を・・・!!
縄だ、縄を持て、縄ッ!」
騎士長ダジースカイが助けに来た。
部下たちが懸命に脚を捕縛しようにも、バッファローのように強靭な筋力で暴れ、のたうち回っている。
「縛れ、絡め取るんだ!」
足首に結びつけた縄を外側へ引っ張ることで、次第に動きが封じられてきた。
腕はすでに捕縄されている。
十の腕、十の脚を縛られてもなお、腰の力で地面を打ちつけて暴れ出す。
ドシン、ドシンと大地が揺れ動いた。
「みんな堪(こら)えろ、引けーッ!
・・・そーれッ、そーれッ!」
二十の方向へ、強者たちが一斉に綱引きを始めた。
「ぐッ、ぐおおおおッ・・・!!!」
この時、縄を掴み返したテンギの十手から炎が起こり、煙を上げてジリジリと焦がした。
焼き切られるか、炎が迫るかと、騎士たちの力が弛(ゆる)む。
そこを怪力で一気に引き返され、前へ倒れる者もいた。