第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
何本もの腕で土塊を砕き、ついに魔法の使い方を理解した化け物が、その頭部を露(あらわ)にした。
攻撃すれば標的にされてしまう。
最後の力を振り絞って這い上がろうとするテンギに、“LIFE”の魔法陣が容赦なく、厳然と呵責(かしゃく)を加えた。
ジリジリ、バチバチと電撃のように巨体を苦しめるものは、実はテンギ自身の“LIFE”である。
他者の生命を憎み、踏みにじり、奪命(だつみょう)して、破壊に明け暮れてきた報いが、全て本人に返っていた。
とすれば、これくらいで済むはずはない。
そうだ、「声」の力だ。
タフツァ然り、ファラ然り、敵の生命に強く呼び掛けていたではないか。
「我が名はバグティムト!
誇り高きLIFE騎士だ。
お前をリザブーグへ連行する!」
歯噛みして声が出ないテンギに、更なる厳罰(げんばち)が現れた。
「ぐぎやゃあー!
ぐうわぁあー!!」
狂った脳裏に、ファラが残した言葉が、何度も何度も繰り返された。
『お前はそこから出られない』
怒りに激痛を忘れた全力が、ドゥレタの発動となって一帯の地面を歪め、ねじ曲げた。
しかし・・・。
なんと、“LIFE”の魔法陣が大地の暴発エネルギーを吸収して、半径を拡大するとともに、テンギを飲み込むよう、再び地面に引き摺(ず)り込んだ。
恐怖と安堵に脱力するバグティムトの元へ伝令が来た。
「タフツァさんのご一行が、間もなく到着されます!」