第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
いよいよ土壁が壊れると見て、バグティムトは最寄りの部下に言った。
「援軍が来るまでは交戦しない。
全員配置に着いた後、今の距離を取って包囲する!」
まだテンギは這い上がらない。
崩れた土が身動きを止めていた。
魔法陣が光る。
呵責ダメージに、地響きのような絶叫が鳴り渡る。
第八部隊は武闘家の集まりだ。
ルアーズのように金属のナックルを装着している。
この時テンギが身に着けている唯一の武器も、刃の付いたナックルだった。
『他の武器がなければ、一人が腕一本を相手に時間を稼ぐか・・・!!』
闘志が燃え上がってきたところで、猛り狂った獣(けだもの)のような咆哮と、暴れ苦しみもがく衝撃音が、ドゴンドゴンと地鳴りした。
大人の胴体ほどもある腕が、バリアと土面の狭い隙間から突き出てきた。
そこへ無理矢理体を捩(ね)じ込もうとして、テンギは背中をひどく痛め付けられた。
“LIFE”の魔法陣に身は焼かれ、心は砕かれる。
ファラへの憎しみが全霊を震え上がらせていた。
土壁がまた崩れた。
テンギが穴に落ちる。
次だ、もはや時間の問題で脱出されてしまうだろう。