第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
第八部隊長バグティムトは汗を滲(にじ)ませ、呼吸を乱していた。
レボーヌ=ソォラ戦役からリザブーグ攻略まで、さまざまな功を立ててきた。
だか今回の任は危険極まりない。
見張りを命じられたテンギが、ファラの魔法陣を壊そうと暴れ始めたのである。
打撃のたびに魔法陣は七色に輝き、テンギにダメージを与えて周囲の地面まで揺れる。
すでにスヰフォスとタフツァに伝令を送った。
味方の隊も近くにいるだろう。
もし、破られたら・・・?
頼もしい同胞ナズテインの顔が思い浮かんだ。
『有事には交戦するな、退避しろ!』
そして彼は意を決した。
「騎士長ダジースカイの隊に援軍を要請してくれ!
我が隊員は、声が届く距離で点在せよ!」
部下たちを一人ずつ避難させる。
自身は持ち場を変えず、伝令の帰りとタフツァを待つ。
魔法陣は壊れない。
テンギの腕が、その円の半径を越えて、大穴の淵を穿(うが)っている。