第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
ドガァも丸腰ではない。
イデーリア大陸を駆けた時から愛用の鎧兜がある。
金属のアームガードには高い攻撃性能も備えていた。
ザンダはドガァに、風を纏(まと)って渦巻く攻撃型ロニネをかけている。
「いいぞドガァ、お前こそ最強の獅子王だ!」
勢いよく咆哮を轟かせる。
空気が震撼して、獣や鳥たちは逃げ去っていった。
前方に、一本角をこちらへ向けて息を荒げ、前肢で地面を蹴り鳴らす、犀(さい)のような動物が現れた。
雄叫びを聞いて逃げとどまり、いきり立っているようだ。
「あいつはかわして行こう、野性動物だ。」
ザンダは後続の馬車に、左へ避(よ)けろの合図を出す。
ドガァが右へ引っ張る。
犀は脇腹めがけて突進してきた。
左の腕で角の生えた横面をはたくと、一気に速度を上げた。
犀がよろけた所へ、バミーナが乗り出し、催涙弾を撃ち込む。
ボカンと弾けて白煙が立ち込めた。
一行は可能な限り交戦を避けてメレナティレを目指して行く。