第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
幌(ほろ)のない馬車に武器を身構え、臨戦態勢でナーズンとバミーナが森を駆け抜ける。
彼女たちは左右に危険がないか見張っているのである。
手に汗握ってノスタムが馬を御した。
その前を駆けるのはドガァに跨(また)がったザンダだ。
機兵の銃撃がないとも限らないので、彼は馬車に一方向性のロニネを張っている。
今ではリザブーグ周辺、メレナティレ周辺がすっかり安全になった。
しかし都市から離れた森の街道では何が起きるか分からない。
時々ザンダが何か叫ぶのだが、風を切っているので聞き取りづらかった。
「お声は聞こえないけれど、ああして剣先で指されるので、言おうとされることは分かるわ。」
付近には、鳥やコウモリの翼を合成された動物が点在していた。
中でも不気味で、遭遇するたびに叩き落とさねばならないのが、有翼のヘビだ。
「外を遮断して内を通す、この不思議なバリアのおかげね。」
ザンダは消耗を最小限にして、道を急いでいる。