第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
「リザブーグの騎士長ゼムトの隊だ!
救援要請か!?」
「おーい、どこだー!」
「声が出せなければ音を立てろー!」
ダッツは頭を蝶に覆われていたが、必死に振り払い、腹から声を振り絞った。
「ここだー、助けてくれー!!」
「応えたッ!」
「待ってろ、体力を使うなー!」
我に続けとばかりに、頬へ捻(ひね)り上げた黒髭を蓄え、白髪が目立つ軍服姿の騎士長が駆けて来た。
シェブロンの上陸作戦前夜からメレナティレ方面の警備にあたっていただけあって、蝶の撃退法も、地下茎への対処も速かった。
彼らは大きな団扇(うちわ)で蝶を吹き飛ばし、水を散布して動きを封じていた。
植物の撃退には火薬を使う。
パーン、パーンと火花が散って、本体と見定めたほうへ爆弾を投げた。
ドドッ、バーーーン!
「災難だったな、オレも何度か捕まったものさ。」
「救援かたじけない、わたしはロマアヤのダッツと申す。」
「こちらこそ、我が国のために海路の援軍、おおいに助かっている。」
「植物の魔物とは、・・・後方支援はおありですか?」
「そこは心配いらぬ、スヰフォス殿がおられるからな。」