第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
長老の森で起きている異変は、ここディスマ周辺にも少なからず起きていた。
永きに渡り強力な魔法場を形成して、古代魔法グルガを封じ続けた土地である。
鉱石メヌゼウムに力が宿ったように、ここで生息する動植物も影響を受けているのだ。
槍兵ダッツが森に奇怪な声を聞き、危険の所在だけでも突き止めようと、深入りせぬ程度に探索していると、魔力を帯びた蝶が青い光を伴って舞う群生地を見つけた。
しばらく呆然となって立ち尽くしてしまった。
すると、足が動かせないことに気付いた。
魔力を持つ植物の地下茎に捕らえられたようだ。
「ワダイルさーん、ピスムさーん、近くにいませんかー!?」
カサカサと羽音を立てて蝶が集まるばかりだ。
体力を奪われる。
生命までも奪われるというのか・・・。
その時、遠くから聞きつけて来る一団の声が響いてきた。