第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
身の軽いラナシーヴは樹皮に爪を掛けて駆け上がり、葉を舞い散らして樹上に至る。
その眼を通して、四方を見回す所からファラも見た。
正面にヤコハ=ディ=サホが聳(そび)えている。
その西側を回って、翼人たちがはしゃいでいた。
翼竜も集まってきて魔族を援護する。
『長老の森だな・・・!!
ラナシーヴ、ヴィスク、奴らの邪魔をしてくれ!
敵は大群だ。
危なくなったら魔法陣に戻っておいで。』
ファラから方角の指示を得たヴィスクも、風のように地を駆けて行った。
長老に連れられて、西のアゴー領に姉妹がいるという女性が手紙を書いてくれている。
「皆さん、ありがとう!
ここは大丈夫です。
木の上に見張り台を作って、村を守ってください。
ぼくの仲間が来たら、村の中ではなく、森でキャンプするよう伝えておきます。」
通訳の男性が来た。
「何か力になれることはありませんか。」
「助かります、・・・リールに餌をいただきたいのですが・・・。」
すると、最初にファラを迎えてくれた青年たちが、荷車いっぱい食料を運んできてくれた。
『おなかがすいたと言っていた。
保存食も、持って行くのがいい。』
言葉は通じなくても、少年は瞳を輝かせて礼を言い、謝意を表していた。