第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
擬態師エモラヒはワリヒ族の出だった。
変わり者と嫌われ、東のタウサー領境界辺りに住処を構える。
これまでもたびたびワリヒやタウサーの者と諍(いさか)い事を起こしていた。
ファラのロニネはすでに解かれ、縄で縛されている。
『なぜ旅人を襲ったんだ?』
『・・・。』
黙り込んでいるので、更に仲間を集めることにした。
森の動物が近寄って操られないよう、見張りを強化する必要があった。
『ではなぜ、森を壊すようなことをするんだ?』
『・・・土人には分かるまい、ケケケッ。』
『お前もワリヒだろう、誇りはないのか!』
あとは黙り込んで、時々独り言を漏らすのみである。
これでは森の見張りも続けなければならないし、エモラヒを縛し続けなければならない。
周辺が騒がしくなってきた。
術師の眷属の獣が増え、村人が増員されているようだ。