第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
まだ午後の明るい時間帯に集落へ着いた。
ワリヒ族は皆、周辺に住居を構えて助け合い生活しているという。
籠(かご)に海藻や貝を獲って抱える少女たちがあいさつした。
ファラはオーバーリアクションなほど丁寧に礼をとった。
「イデーリアから来ました、ファラです!
よろしくお願いします!」
少女たちははしゃぐように笑い合って手を振る。
村の女性たち、白い髭(ひげ)を蓄えた老人も集まってきて旅人を歓迎してくれた。
この時ファラは、狐のラナシーヴではなく、小竜リールを肩に乗せていた。
担いできた術師エモラヒは、村の門をくぐらせてもらえずに、同行の若者たちが取り調べ、見張っている。
やがて長老が出迎えると、自らファラの手を取って家まで案内して行った。
元イデーリアから来てここへ定住した男性が話しかけてくれた。
「あなたはリザブーグ王国の騎士ですね。
旅の目的など、忌憚なくお聞かせください。」