第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
ファラがラナシーヴを紹介して、時に獣の鳴き声や身振りを真似て見せたので、ワリヒの若者はカラカラと笑った。
働き者の風格を湛えて先導してくれている。
彼を探して来たのだろう、遠くから若者が三人ほど駆け寄った。
すぐにファラを紹介する。
「皆さんの大切な森を守るため、マーゼリアから来ました、ファラです。
よろしくね!」
意味は分からなくても、その元気な声、明るい笑顔、自身を指差す身振りで、すっかり気に入られたようだ。
『ファラ、ようこそ、ようこそ!』
早くも名前だけは覚えてもらうことができた。
仲間の一人が自分の腹を叩きながら何か聞いている。
すぐにそれと分かって、少年は「お腹がペコペコだ、たくさん食べたい」というジェスチャーを見せると、全員が声を出して笑っていた。