第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
エモラヒの正面から振りかぶって背後へ、斬り抜いたファラが立っていた。
顔にかかっていた黒ローブは脱落し、大無刃刀の剣先で折り伏された。
次の瞬間、切り返す大刀の側面で腰を殴打され、退け反って叩き飛ばされる憐れな術師の姿があった。
ファラは、輪状の攻撃型ロニネで敵を縛し、詠唱まで封じて肩に担いだ。
「ラナシーヴ、立てるか!?」
術師が発動不能になったため、リールの意識が鮮明さを取り戻し、ラナシーヴも起き上がることができた。
「よし、しばらくそのままで、一緒に歩こう。」
戦闘を終えてみると、ワリヒ族と思われる若者が、魚の骨でできた槍を抱えてこちらを見ていた。
「やあッ、ぼくはあなたたちの味方です!
ほらこの通り。」
ファラは大刀を納めて背負った。
言葉は通じるだろうか、それでも友好的な対応は伝わったらしい。
『君の腕前は素晴らしい!
近頃おかしな魔法使いが森を壊して迷惑している。
村へ寄って、力を貸してくれないか?』
捕縛した術師を指差して怒りの表情を見せ、ファラに向かっては懇願する様子で、森の先を示している方角には集落があるに違いない。