第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
最小の衝撃で空気の破裂を起こして、バチンと毒蛾を弾き飛ばす。
落下した地点では、迷彩色の黒ローブで顔を半分隠した擬態師エモラヒが、クスクスと鼻を啜(すす)るように笑っていた。
ファラから分離した小竜リールは、何かを振り払うように頭を振っている。
そしてエモラヒに手繰(たぐ)り寄せられ、一歩、また一歩と歩いた。
「大丈夫か!?
・・・くそッ、動物を操っているな!」
リールに駆け寄って抱き上げると、魔法の糸を引き千切り、頬を叩く。
「しっかりしろ!」
小竜は意識を取り戻したが、ぐったりしてしまった。
今度は妖孤ラナシーヴを召喚してリールを変化させる。
よろよろと場を離れ、休息した。
ファラがロニネで守る。
「さあ来い、大地に沈めてやる!」