第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
小さな翼をはためかせて、小竜リールはオルブーム大陸ワリヒ領へ降り立った。
突如、地鳴りにも似た大音声が響き渡ると、思わず五体に身震いが走る。
『よく来たな、少年よ!
恐れることはない、我はヱイユの眷属(けんぞく)なり。
お前の行く手に数多(あまた)の蠱魎(こりょう)ありといえども何かせん。
願わくは世雄(せおう)となりて、この土(ど)を安穏ならしめ給え!』
『・・・あなたは!?』
声の主は龍王ゲルエンジ=ニル、小竜に変化しているのはファラだった。
共に戦ったことはなく、少年は知る由もなかったが、龍王はLIFE騎士と少数民族の娘の間に男児が生まれた時から、未来をも変えるであろう慶事と喜んだものだ。
もしそこに“LIFE”がなかったら、少数民族が忌み嫌う悪しき力の乱用も危ぶまれただろう。
しかしその絶大な力は今、妙なる正法を胸に抱いて誕生したのである。