The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」

第 01 話
戻る 次へ

『ヱイユ君、また、一人で戦っているの?』

強風が、ひっきりなしに吹き衝(つ)けた。

『ねえ、私。
行ってもいい?』

差し込む光が眩しすぎて、強く目を閉じる、ぎゅっと目を閉じる。

『だめだ、生徒たちはどうする、お前が居なくなったら。』

不思議な色だ。
緑色の、魔力を秘めた光。

だが彼は急にむせて、ゲホゲホと咳をした。

光に満ちていた世界は、にわかに暗い影で覆われ、枯れ落ちた木々や草花の悔恨へと深く埋没してしまった。

その時、共に孤独の中で生きてきた二つの生命は共鳴し、交信した。

『今、行くね。』
『来るな。
俺もお前も死ぬだけだ・・・。』

本当は、彼も生きたかったのだ。

ハッ、と目が覚めた。
自らの額に触れた時、彼は恋い焦がれ、最も愛した人の姿を夢に見て、声さえ聞いた感動で、すっかり頬を濡らしてしまっていた。

細い水の流れが近くにある。
以前は心地良い高音(たかね)を響かせていた小さな川も、今はドロドロと重く鈍い毒に冒されていた。

戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.