The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 42 話
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シェブロンはミフティオとフィヲをその場で待たせて獅子王の座の方へ行き、広間の警備に当たってくれている3人の女騎士を呼んだ。

「これは、向こうの彼女のご住所だ。
帰りが遅いとご両親が心配されるから、きみたちで送り届けてもらいたい。」
「はいっ。」
「広間の警備はいいよ、わたしが見ておく。」
「いいえ、先生。
待機している者がおりますので。」
「心強いな。
では頼む。
戻ったら、それぞれ見たことや感じたことをわたしに知らせてくれ。」
「はいっ。」

女性の騎士団というものは王国時代には存在しなかった。
今では“LIFE”に目覚めた女性たちの中から志願する者が出始め、訓練を受けて戦闘に立てるまでになっている。

もちろん剣を抜いて戦うことができる。
中には魔法を使う者もいた。

とともに各々の特性を生かして、タクトのような宝飾の剣を掲げて戦いを指揮する司令官、敵のふいをついて武器を奪ってくる者、味方に矢弾を運ぶ者など、サポート的な役割を買って出る者もいた。

また、管楽器を吹き鳴らして士気を鼓舞し、敵を圧倒する勇壮な従軍者もいる。

今シェブロンに指名された3人の女騎士は、いずれも戦闘に立って戦えるタイプであり、名前をルオミア、ユナーファ、シスキュスといった。
年齢はソマと同じか少し若いくらいである。

3人を従えてシェブロンはミフティオの所に戻り、紹介していった。

「ルオミアは強力無比なアタッカー。
両手武器を持たせたら彼女の右に出る者はいない。
男性の騎士たちもその腕前に舌を巻いている。」
「私が前を歩きますので、ご安心ください。」
「は、はい・・・。
よろしくお願いします。」
「ユナーファ。
弓やボウガン、投擲武器の扱いに秀でたスナイパー。
物音や空気の揺らぎも敏感に察知する。」
「夜の一人歩きは危険ですからね、おうちまでお送りします。」
「ありがとうございます。」
「シスキュスは2本の剣で戦う剣士。
一人で何人もの敵を相手にする。」
「素手でも戦えますのでご安心を!」
「助かります・・・。」

1階まで同行して見送ろうとするシェブロンに、ミフティオは恐縮して言った。

「せ、先生。
父と母のことを聞いてくださり、心が軽くなりました。
希望が持てるようになりました。
本当にありがとうございます。」
「あなたに喜んでいただけてよかった。
明日の午前中にお伺いします。」
「はい、私、お城までお迎えにまいります。」
「大丈夫、彼女たちに案内してもらうから。
そうだ、その時間、お仕事は?」
「午後からですので、私も家におります。」
「うん、ではまた明日、気をつけて。」

広間に戻ると、彼はずっと気にして待っていたフィヲに言った。

「『逆方向魔法陣』だな・・・。」
「えっ!?」
「病の原因だ。
知らずに置いているのだろう。」
「家具としてですか・・・?」
「おそらく。
きみもよく覚えておきなさい、未だ“LIFE”に目覚めない多くの家庭では、悪魔結社マーラなどの手による『逆方向』の調度品や書物などが使われている。
悪しき“一念”で作り上げられたそれらの物は、決まって災いをもたらすものだ。
世界に闇が存在する限り、わたしたちはそこへ足を運び、道理の観点から正邪を見極め、闇が闇を呼ぶ『不幸の流転』を止(とど)めていかなければならない。
・・・未来には、時とともにこうした悪法が充満し、いたる所へ入り込んでくるだろう。
だからこそ今、法の正邪をはっきりと示しきっておくことが肝心なんだ。」

語気を強めるシェブロンに、フィヲは深く銘記して頷いた。

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