The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 39 話
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「見たかい、フィヲ。
これが、きみの行く世界だよ。」
「はい・・・!!」

フィヲは感涙を抑えようともせず、ヴェサにしたように、親愛の情を込めて師シェブロンの頬にキスをした。

「ありがとう、可愛いわたしの娘フィヲ。
きみはどこへ出しても恥ずかしくない、わたしの誇り、わたしの幸せそのものだよ。」
「先生、必ず『長老の森』を鎮めてきます。
今見た宝の塔の様相を、世界のどこにあっても現出させてお見せします。」
「そうだ、そのためにこそ、一人の師に始まって、無量の弟子が各地に躍り出、“LIFE”を伝えていくんじゃないか。」

両手を合わせて深くフィヲを敬ったシェブロンは、師と弟子という関係からではなく、今度は父と娘の関係において言った。

「おなかがすいただろう。
先に食堂へおりていなさい。
サザナイアさんをお迎えに行くんだよ。」

元気よく返事して広間を出るフィヲと、すれ違いにナズテインが入ってきた。

彼はシェブロンの前まで来て片膝を着き、報告を始めた。

「リザブーグの森で翼人や黒ローブの術士たちが目撃されております。
まだ戦闘になった部隊はありません。
特にメレナティレ、リザブーグ、ミナリィを結ぶ通信の要所が狙われているようです。」
「うむ・・・。
回線は攻撃で分断されるものなのか。」
「一箇所が破壊されても、他のルートを経て通信は可能です。
その場合、攻撃を受けた箇所の修復と敵の撃退を同時に行います。」
「回線の設置経路が敵に知られてしまえば、全てのルートが同時に破壊される、ということも考えられるな。」
「はい。
翼人たちはその偵察にあたっていると見られます。」

シェブロンは黙って頷いた。
そして獅子の座の後ろにある窓の外を見た。

「電気ネットワークはメレナティレが敷いた通信網です。
敵の狙いが寸断なら、圧倒的な数の差によって我々は振り回され、防衛体制まで破られてしまうことでしょう。」

言葉を継ぎながら、ナズテインは一刻も早く師に安心してもらいたくて、幾分早口になっていた。

「ですが先生、たとえば方陣の充填は正多角形の頂点間で、仮にどのような破壊工作が行われたとしても、分断されることはありません。」
「おお、そうだな。」
「そこで次なる通信手段としまして、我々はディスマの封印に使われた『古代の方陣』を活用したいと考えております。」

その提案は、シェブロンにとっても希望の光だった。

「魔法を電磁波に変えて通信するのか・・・!!
いいじゃないか。」
「はい。
・・・ただ、この技術が悪用されますと、敵が別の目的で使う恐れもあります・・・。」

たしかに敵が電波通信によってこちらの動向をつぶさにキャッチするとしたらこの上もなく危険である。

「そうか・・・、トーハさんは、何と言っている?」
「戦いは、遅かれ早かれ『情報戦』になるでしょう。
これを制するのがLIFEの技術者の使命である、とおっしゃいました。」
「わかった、万事、きみに任せてもいいか。」
「はい!
LIFE騎士団は敵のどのような攻撃からも、先生と同志を、民衆を守り抜きます!!」

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