第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」
心の響きが音となって空間を満たした時、その声は世界中、いな大宇宙のどこにいる相手にも届くに違いないという確信が湧き起こってきた。
そこは王城のいち広間ではなくなり、広大にして無辺なる“大生命”の内側であるように観ぜられるのだった。
まるで七つの宝に荘厳された宝の塔であり、一面は清浄なる香に包まれていた。
どこからともなく天の妓楽が奏でられている。
地上を彩る花々、天から舞い雨(ふ)るマンダラカの華。
『私はここにいたのね。
なんて素晴らしい世界でしょう・・・!!』
シェブロンに導かれたフィヲは、周囲を見回すと、自分と同じようにファラが飛来しているのに気が付いた。
荒々しい闘神のヱイユも、穏やかな表情をしていた。
サザナイアがフィヲのところまで上がってきた。
スヰフォス学師も、タフツァも、ウィロも、愛犬のゴウニーも。
向こうにソマがいる。
小さな教え子たちを連れている。
ヤエがいて、ピスム、ベーミラ、デグラン、ワダイルもいる。
ルアーズとアンバスが楽しそうに駆けた。
『あ、ザンダーっ!!』
ロマアヤ、セト、メビカ、ウズダクの騎士たち戦士たちを全員引き連れて、遠くからザンダが応えた。
『おねえちゃーん!!』
キラキラと飛び交う光は温かく、七色に煌いて、フィヲはあまりのうれしさに涙を流した。
『みんな、ここで出会っていた。
生まれる前からずっと、この“LIFE”の光の中にいたんだわ。』
師シェブロンは微笑み、フィヲを見て、周囲の空間を指差した。
そこにはなんと、おびただしい数の竜族、悪魔の一族、魔獣たち、それらの眷属、この者たちを操る黒いローブの術士たち、鋭利な刃物を持った悪鬼どもまでが雲集して集い来たり、あろうことか、それぞれのやり方で“LIFE”を敬い、尊び、讃歎してやまないのである。
フィヲには一目見てそれと分かった。
あえて疑念を抱いたり、師に問うたりする必要はなかった。
『彼らも本来、ここにいたんだわ。
万人の内なる“LIFE”が開かれるならば、この宝の塔の姿のように、種族を超えて“ただ一つの願い”へと帰順することができる。』