The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 35 話
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約束の4時になってもウィロが姿を現さなかったので、タフツァは最初ひどく心配した。
出発間近だというのに、テンギの情報を集めてくるようにと言ったことを後悔していた。

ウィロがいなければ馬車は出せない。
単独で出発するとしても他の御者を雇わなければならないだろう。

テンギが埋(うず)まっている穴までは、とても歩いて行ける距離ではないのだ。

この日タフツァはLIFE騎士団に要請して、テンギを見張るバグティムトの部隊に援軍を出した。
レンガーの第二部隊である。

また、周囲の森にはレヂョウの第九部隊が潜伏することになった。

ミルゼオ方面の警備を任されているダジースカイには、ヌザルムの第六・重装部隊が協力している。

二重三重の布陣が整った。
馬車も借りて用意されている。

御者を務めるはずのウィロだけがいなかった。

バグティムトの部下から定時に寄せられる報告があった。
この午後4時の報を受けて出発する予定だった。

「テンギに変わりはありません。
しかし、3人の術士が目撃されております。」
「なに!?
身なりは?」
「いずれも有翼の黒ローブです。」
「ついに来たな・・・!!
テンギに近寄らせるな。
各部隊は持ち場を固めてくれ。
交戦する場合は術士であることを忘れず、『アンチ・マジック』の陣を張るんだ、厳重にだぞ。」
「分かりました。」

いよいよリザブーグ周辺の森で戦闘が起こるだろう。
どの部隊も、まことに頼もしく、真にLIFEの騎士へと育っていた。

『来るなら来い!
来ないならこちらから行ってやる!!』

タフツァは燃え上がる闘志で拳を握ったが、やはりウィロのことが気がかりだった。

すると、ヴェサが遣わした兵がやって来た。

「タフツァ殿!
ご伝言です。」
「誰から?」
「ヴェサ様です。」
「うん、言ってくれ。」
「『あたしが大事な話をするのに、引き止めて時間を取ってしまった。
悪いが出発を30分遅らせてくれ』、とのことです。」

タフツァは一瞬黙っていたが、ウィロのことを考えれば、ヴェサの元から出発することで、失う時間以上の価値が生まれるだろうと思った。

「ありがとう。
ここで30分待つよ。」

兵士は深く頭を下げて、急ぎ足に持ち場へ戻って行った。

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