第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」
『身動きもとれないはず。
受け続けるつもりかしら・・・!?』
フィヲに起こさせた動揺こそ、サザナイアの、剣によらぬ一太刀だったといえる。
彼女の心は、その剣の腕と同じだけの強さを持っていた。
剣の道に生き、磨き鍛えられたものは決して技ばかりではないのである。
フィヲがあと1時間撃ち続けられる魔力の持ち主ならば、サザナイアはその1時間を耐え抜くだけの体力の持ち主なのだ。
『つまり、総合力では互角か、それともどちらかが上手(うわて)か。
勝負である以上、今の力量の勝ち負けをはっきりさせなければならない。』
元々フィヲは闘争心によって戦うタイプではない。
一方サザナイアは、相手が強ければ強いほど燃え上がるタイプである。
フィヲは威力を上げた。
当然、消耗が激しくなる。
サザナイアは押されて後退した。
だが、戦意は一層高まっていた。
『サザナイアさんのペースにしたら負けてしまう。
私が撃って、彼女が打ち返して、という練習ではもうない・・・。
全力で押し切ってみよう、できるかしら・・・??』
フィヲの魔法弾に殺傷力がないことは言うまでもないが、打たれ打たれながら、確かにサザナイアの体力は削られていた。
その消耗は、フィヲが魔法を放ち続ける消耗とほとんど変わらないといってよい。
『私の魔力の総量と、彼女の体力の全てと、減じ合わせるようで惜しいけれど、これがLIFEの、演習の訓練だわ。』
持久力の勝負にケリがつかないならば、瞬発力はどうか。
フィヲは思いきって撃つのをやめ、瞬時に大きな魔法の球を作り出した。
渾身の一撃が放たれる。
サザナイアは立ち向かっていった。
『いけない、貫通されてしまう・・・!!』
剣先を突き出し、頭から魔法球に飛び込んだサザナイアは、速度を落とされながらも打ち返されることなく、ついに突き破ってフィヲの前へ躍り出た。
慌てて撃った一弾、二弾までも打ち返され、バリアをかすめ、さらには命中した。
三弾目は盾で防がれ、跳ね返され、ついにサザナイアの剣がフィヲのバリアまで届いた。
「これで、どうだっ・・・!!」
横薙ぎに、剣の側面で、力いっぱいの強打を喰らった。
フィヲはバリアごと転倒して、水路に落ち、あまり驚いたので発動が解けてしまった。
こうして、練兵所のルールによりフィヲは敗れ、サザナイアが一戦を制したのである。