The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 30 話
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フィヲが手始めに一弾、撃ってみる。
カーブを描かない直球である。

サザナイアは、目の前に剣の打ち合いの相手が現れたかのように、飛びつくように攻撃をしかけた。

片手で振り抜いた彼女の長い剣が見事にヒットする。

まっすぐ、フィヲへ打ち返された。

「ひゃっ・・・!!」

フィヲのバリアに当たって魔法弾がはじける瞬間、視界は遮られ、衝撃だけが伝わってきた。
思わず目をつぶってしまう。

この威力でまともに打たれてはたまらない。

すぐに宙へ逃れようと思ったが、サザナイアに間合いを詰められていた。

トンと地面を蹴って後退(あとずさ)っても、追撃の方に勢いがあった。

ボウン、ボウン・・・!!

外から叩かれると弾力のあるバリアだが、このまま力で押されれば水路に落ちてしまう。

元より脚力は普通の少女とさほど変わらない。
そのため筋力ではなく、魔力を強めることで、サザナイアに向かって突進を試みた。

だがそこへ盾の強打が飛んできた。

クラッシュして相殺(そうさい)された力は、相手の方が上だった。

ポーンとはじき飛ばされて、フィヲは危うく水に足を突っ込むところだった。

『この閉じた空間の中で戦う限り、サザナイアさんに分がある・・・。
だけど今は真剣勝負。
魔法が撃てなくなるまで、本気でお相手しなければ・・・。』

迫り来るサザナイアが見えた。
その目は燃えるような情熱をたぎらせているが、表情は、なんとも楽しそうに笑っているのだ。

『多くの対戦者は、サザナイアさんのこの勝ち気、攻め気に押されて敗れるんだわ・・・!!』

心の底から、頼もしいという想いが沸き起こった。

異性ではないが、彼女のことが大好きだという気持ちが溢れ出る。

「全部防ぎきったらあなたの勝ちです、サザナイアさん!」

1発、2発ではなく、10発、20発でもなく、マシンガンのようにフィヲの魔法弾が連発でサザナイアに襲い掛かった。

先の攻勢が完全なる防御に回るほど、サザナイアはガードに徹せざるをえなくなった。

威力をこのままに保っていけば、フィヲは1時間でも撃ち続けられただろう。
真剣勝負を受けて立つ以上、当然負けてあげるつもりなどない。

しかしその時、防いだ両腕の間から、サザナイアの瞳が見えた。
やはり笑っているようだった。

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