第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」
サウス・ウエストタウンの練兵所は高い天井を備えていた。
以前ファラとルアーズがトーナメント戦に参加した時、魔法の使用は禁止されたが、今では魔法を使った派手な打ち合いも行われている。
木々の梢ほどの高さまでなら空中戦の練習をすることができるだろう。
闘技場の四囲に水が流れる作りは変わっていない。
軽くなった体で、サザナイアは跳躍を試してみた。
「よーし、フィヲちゃん、ここからは本気でお願いします!」
「わかったわ。
壁に魔法が当たっても吸収されるから、思いきり打ち返してね。」
フィヲがバリアを纏(まと)って浮上したので、サザナイアは剣にロニネをかけて身構えた。
杖の一振りで、ボール状の魔法が放たれる。
「それっ・・・!!」
剣は見事にヒットし、ボールは打ち返されたかに見えた。
しかし、ボールは失速しただけで、自分の体が後ろへ飛ばされてしまっていた。
『踏ん張りが利かない・・・!!』
すぐにそれと見て取ったが、フィヲは心を鬼にして、更に仕掛ける。
ズドン!
ドン!
ズドン!
サザナイアは押されて水際まで後退しながら、どうすればボールを打ち返せるか考えていた。
『飛んでくる以上の勢いで、向かっていかなくてはダメだわ・・・。』
よけるばかりだった彼女が、隙を狙って、ふいに一つの弾(たま)目掛け、飛び掛った。
人の脚力は星の重力に逆らって地面を歩き、飛び跳ねることも可能だ。
その重力が軽減されたことで、本人ですら驚くほどのジャンプ力が発揮された。
とにかく当てなければ。
剣を振るだけの余裕はなかった。
真っ直ぐに突いたのである。
フィヲはよけられなかった。
「キャッ・・・!!」
彼女の意思により、バリアを貫通する力の向きが外へと転じ、打ち返されたボール状の魔法は、風船が破裂するように四散してしまった。