第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」
フィヲは心を鬼にして、目を瞑った。
そして立て続けに回転体を放つ。
その描く軌道はまさに変幻自在だった。
サザナイアもようやく厳しい修行に入り、集中は極限まで高まっていった。
すると、相手がフィヲに思えなくなってきた。
最初、押し寄せる波のようであったものが、次第に強まり、怒濤の如く、飲み込む勢いを呈していた。
『苦しい、・・・でもありがたい。
フィヲちゃんをここに残してくれて助かった。』
猛然と風の刃が襲い掛かる。
両手で剣を持てる程度の、細長い盾で受けて、払いのける。
次の刃が飛んでくる。
剣で打ち返す。
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、・・・一体いつまで続くのだろうか。
それでも現実の戦場にあっては、敵がどれくらいいるか、攻撃の波がいつ収まるかなど予測がつかない場合も多い。
ヒーリングとバリアを使いながらのフィヲは、魔力に際限がなかった。
あるとすれば、こちらから仕掛けて、魔法を撃てなくすることか。
サザナイアは、もしかするとフィヲは、こちらから攻撃を仕掛けて魔法の連打を止めに行かない限り、撃ち続けてくるつもりなのでは、と思った。
「フィヲちゃん、行くわよっ・・・!!」
「え、えっ!?」
ふいに目をあけたフィヲの目の前に、サザナイアが斬りかかってきていた。
フィヲは思わず突風を起こして、相手を反対の壁まで吹き飛ばしてしまった。
「キャアアアッ・・・!!」
ふわり、と、空中で態勢を立て直してもらったサザナイアは、急に恥ずかしくなって、結局フィヲにゆっくりと地面まで降ろされてしまった。
「うーん!
フィヲちゃんには勝てないのかしら・・・!!」
「滑走」の練習もしなければならない。
二人は町の外へ出て、しばらく走ることにした。
「敵がどんな魔法を撃ってくるか分からないでしょ?
でもね、“LIFE”の魔法陣で受けることができたなら、邪悪な魔法を、清浄なエネルギーに変えて、それを打ち返すことができるの。
サザナイアさん、“LIFE”の配置を覚えているかしら?」
「何度か描いてみてはいるけれど、とっさの判断では出ないわね・・・。」
「それなら、打ち返すことはだんだん慣れてきているから、ここからは“LIFE”を描くことだけに集中して。
・・・走りながら、私、魔法を撃つわ。」
周囲の森は新たにLIFE騎士となった旧王国兵たちが厳重に警備にあたってくれている。
フィヲは彼らに許可をとって、一定のエリアで模擬戦形式の特訓をサザナイアに提案した。