第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」
「どのような場面で、どの魔法を使うかの判断は、全て使用者であるあなたに委ねられます。
ですから、今後はますますLIFEの剣士として磨きをかけていただき、味方のみならず、敵をも救いきる戦いをお願いします。」
師は、無理に飛翔しなくてもいいと教えてくれたのだ。
スヰフォスとともに闘技場を後にする折、更に助言が与えられた。
「『滑走』に慣れておくことは、あなたの力を大いに活かすでしょう。
また、『飛翔』という目標は持ち続けていくのがいい。
どんな方法でも構いません。
“LIFE”のために振るう剣が、地上だけでなく、空中でも展開されますように。」
これで明確な目標ができた。
装備品の完成は明日に迫っている。
もう長く特訓していられない。
二人とも焦りを感じていた。
だからシェブロンは、サザナイアが即戦力となるために「ブラスティング・ブレイド(旋回刃)」という対空攻撃の武器を与えた。
どんなに心が軽くなったことだろう。
また、これまで求めてきた「飛翔」についても、できないからと言って諦めるのではなく、将来修得すべき目標に定めてくれた。
この時ほどサザナイアは師を有り難く思ったことはなかった。
それで二人の師匠が立ち去る間際、大きな声で言った。
「シェブロン先生、スヰフォス先生、ありがとうございました!!」
シェブロンは笑み、スヰフォスは手を振ってくれた。
なぜか涙が溢れた。
「さあ、サザナイアさん。
さっきの結界がまだ有効ですので、魔力が尽きるまで撃ってみましょう。」
剣と剣の打ち合いならば無敵の強さを誇る彼女が、畑違いとも思える魔法の特訓に、初歩から取り組んでいるのだ。
しかしこの訓練があったからこそ、彼女は更なる高みへ至ることとなる。
「じゃあ、はじめは私が投げますね。
打ち返してください。」
フィヲは「ススハ(回転)」型の魔法を起こし、サザナイアの方へ飛ばした。
「ロニネ」を込めた彼女の長い剣が、フィヲの回転クネネフに当たる。
「いけないっ、あぶないっ・・・!!」
フィヲが両手をパチンと合わせると、クネネフの回転体は消え去った。
斬り込んだ角度が悪く、跳ね返らずにサザナイアの方へ転がって行きそうになったからである。
「ごめん!
回っているものを斬ったことがなくて・・・。」
「何度も打てば大丈夫よ!
打ち返す力は反射と同じ。
飛んでくる勢い以上で振り抜いて!」
カン!
今度は天井と壁の角(かど)へ飛んで行った。
だが、これを標的に命中させなければ攻撃とは成り得ない。
風の刃はしばしば空気を切りながらカーブを描いた。
真っ直ぐに飛んでいくものでもないのだ。
「フィヲちゃん!
私に当たっても構わない。
自分の責任で防ぐから、続けて撃って!
剣士の修行だもの、ちょっとの怪我ぐらい、どうってことないわ。」