The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 05 話
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直前の会議でタフツァが説明した。

「私たちの戦いは、今の想像に及ばないくらい困難な局面とぶつかることがあるでしょう。
その時に、世界で一体何が起こっているのかを、知っていていただきたいのです。」

ソマとヤエ、スヰフォスとナズテイン、ルアーズとアンバス辺りはおおよそ分かっているかもしれない。
だが、それ以外のメンバーには全く未知の敵との戦いになる。

「私たちの住む星『アズ・ライマ』は、楕円体をした惑星です。
人間や動植物と同じように、一個の“生命体”でもあります。」

生物であるとは言わない。
星にもまた“生命”があるのだ。

「“生命体”である以上、『アズ・ライマ』も“LIFE”を願い、不変の“祈り”を持っているのです。」

小さな種(しゅ)が、より大きな種(しゅ)によって捕食され、生を終えるとしても、大きな種が生存するためには生かされ続けていることになる。
これは“生命”が織り成す連鎖の姿であって、殺戮のための殺戮とは全く異なっている。

また、人間や動植物が、時に憎み合い、殺し合うことがあっても、本来、殺傷されることも殺傷することも望んではいないのだ。
そんなことのために生まれてきたわけではないと知っている。

しかし、不遇や挫折などから、生を厭(いと)い、生を忌み嫌って、生を憎むようにまでなると、自暴自棄となり、自らの生も、他者の生も蔑(さげす)むようになるのだ。

実にここから“LIFE”の崩壊が始まる。

「星は“LIFE”を願い、“LIFE”を謳(うた)い続けているのです。
ところが、母なる星を破壊しかねない人間の動きがあります・・・。」

ここからが本題だ。
会議に集っている誰もが、そうした存在を見たり聞いたりして知ってはいる。

「かつて古代魔法“グルガ”が封印された時、元々“グルガ”を得意とする術士たちは一度に力を失い、危険勢力として処刑、追放されました。
彼らは全て途絶えたはずでしたが、後世になって、“グルガ”の末裔が歴史の表舞台に姿を現し始めたのです。」

まだ寝ぼけていたザンダは、部屋着のまま聞いていたが、それくらい知っているよとばかりに、こらえきれなくなって大欠伸(あくび)をした。
横にいたフィヲにほっぺたをつねられる。

「レボーヌ=ソォラに『悪魔結社マーラ』という組織が存在しました。
彼らは古文書に記されていた『悪魔』を、生体合成によって再現し、生物兵器として実際に使用しています。
現在、LIFEと現地の人々の協力で術士は捕縛され、アミュ=ロヴァに服役中です。
また、セト国にホッシュタスという術士がいました。
彼は恐るべき人心使いであり、千手の鬼神テンギを意のままに操るといいます。
オルブーム大陸の北部、『長老の森』にいると思われます。
・・・こうした術士が今なお世界各地に潜伏しているのです。」

敵の全てを知らなくても、皆、そのうちの誰かは知っていた。
いずれも強敵であり、各地に仲間がいると言われては不安にならざるをえない。

「彼ら『闇の一族』は“LIFE”に触れることができません。
そのため、“LIFE”によって守られる『長老の森』には、手出しなどできないはずでした。」

城内がざわついてきた。
タフツァは続けた。

「闘神ヱイユからの手紙によれば、彼らの中に『擬態』を用いて動植物を惑わす術士がいるということです。
つまり『闇の一族』は、『長老の森』に生きる動植物の生態やバランスを狂わせることにより、ついに『長老の木』を手中に収めたといいます。」

反“LIFE”に敏感なフィヲは、気分が悪くなったようで、頭を抱えてうつ伏してしまった。
今度はザンダがフィヲの背中をさすってやる。

「『闇の一族』の狙いは、世界の魔法エネルギーの流れを、本来の“LIFE”から、反“LIFE”へと変え、世界に充満するエネルギーの全てを、破壊と殺戮のために利用することであるのは明らかです。」

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