The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 02 話
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会議の後も、広間ではベーミラとデグランがシェブロンと話している。

「実に素晴らしい舞踊でした。
どちらかに入門されて修得されたのですか?」

ベーミラは戦闘で見せる大胆な立ち回りと対照的な、内気な性格の持ち主だ。
褒められただけで赤面して、うつむいてしまった。

「・・・はい。
私とデグランは、元、ミルゼオ国からルモア港、ワイエン列島を中心に活動する旅の演舞団の一員でした。
アミュ=ロヴァで親しくなったヤエに、サウォーヌの密偵にならないかと誘われたのです。」
「ほう、それはまた、あなたほどの技能をお持ちの方が、なぜ?」
「レボーヌ=ソォラ各地の公演で、私たちは世界に異変が起こっていることを感じていたのです。
人々の心は荒(すさ)み、演舞を楽しみにしてくれているけれど、彼らからお金をもらって生活しているだけで、本当にいいのか、と思っていました。」

デグランも話し出した。

「自分はレスラーを目指しましたが、肉体を鍛えるのは血だらけになって相手を倒すためなのかと考えました。
それで、違った形で感動を与えられる演舞団のパフォーマーになり、しばらくしてベーミラとともにサウォーヌの一員になったのです。」
「これだけの肉付き、誰にでも作り上げられるものではありません。
あなたらしい道で、大いに活躍していってください。
・・・どのような力でも、必ず“LIFE”のために役立てられるのです。
使う目的を誤れば、自分も、支持してくれる人々も不幸にしてしまう。
だからこそ正しい目的観を、“LIFE”を社会の中に確立していきたいんです。」

そう言ってシェブロンは、デグランと固い握手を交わした。

同じ階の廊下からヤエが来る。
左右をきょろきょろと見ながら、やや慌(あわ)て気味だった。

「ヤエっ!」
「ベーミラ。
そろそろ出発ね。
でもその前に・・・。」

ヤエがうつむき加減に顔を赤らめた。
こういうところがベーミラと似ている。

「誰か探しているのか?」

デグランは他意なく聞いたが、ベーミラはヤエが誰を探しているのか分かって、仲間のぶしつけな質問を非難する調子で言う。

「ほら、荷物がたくさんあるんだから、デグラン先に行ってて!」

シェブロンは笑ってフォローした。

「皆さんには本当によくしていただいて、感謝に尽きません。
・・・ソマはどこへ行ったかな、後でお見送りに行きますよ。」

彼はヤエがタフツァを探しに来たことを気付いていた。
そして彼女が、デグランには知られたくない様子だったので、ヤエをソマの所へ案内して行くふりをしたのだ。

「先生・・・。」
「大丈夫、テンギと戦うと言ったが、絶対に無理はさせません。
本当は、あなたにはタフツァ君とともに戦っていただきたいのだが、今のソマにはどうしても、何でも話せる女性のお友達が必要のようです。」

すると屋上の方からタフツァがおりてきた。

師が愛弟子に言う。

「皆さんとはしばらくのお別れになるだろう。
お世話になったのだから、彼女にもよくお礼を言いなさい。」

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