第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 07 節「七宝(しちほう)身に具して」
多くは同じであっても、ファラとフィヲにそれぞれ為(な)すべきことがあった。
まず師に全て報告してこよう。
「先生、サザナイアさんの装備ができるまで、フィヲの出発は待ってもらおうと思います。
その間、飛翔の特訓をしたり、ヴェサさんにご教示いただくようにしたいのですが・・・。」
シェブロンは、広間に散らばって打ち合わせている人々を眺めながら、時々近付いて声をかけるなどしていた。
ファラとフィヲが入ってきたので、歩いて迎えてくれた。
悩んでいることは表情を見ればすぐに分かる。
「まず日数を決めなさい。
装備が完成する日を、フィヲとサザナイアさんの出発予定にしておくことだ。
そしてそれまでに、何をどこまで進めるのか、よく決めておくんだ。」
出発が別々になることが一番の不安でもあったが、師が考えを支持してくれたのでファラはホッとした。
「新しく魔獣を捕らえたそうだね。
全部で5体か。」
「はい。
大蛇のシラルル、有翼爬虫類のニムオー、一角馬モゼイラ、キツネのラナシーヴ、そして狼のヴィスクです。」
「有翼獣に乗っていくつもりかい?」
「背中に乗って。
人が二人までなら乗れる大きさです。」
「うむ・・・。
敵方の眷属(けんぞく)である有翼獣を一匹捕らえた形だ。
動きは目立ち、警戒もされるだろう。」
「空中戦になっても構いません。
他の魔獣を召喚して、魔力で浮かせたり・・・。」
「きみの消耗が大き過ぎる。
1時間ともつまい。」
確かにその通りだ。
ニムオーが撃ち落されれば、上空でファラ一人、悪魔や竜に取り囲まれ、攻撃されることになる。
「身を軽くするのも飛翔ばかりではないぞ。
魔力を持った狼や狐が地上を走る速度に乗ることもできるだろう。」
フィヲの魔法で“光”に姿を変えられたように、本来ならば“風”となることもまた可能であるはずだ。
しかしファラは「クネネフ(風)」を奪われてしまっている。
シェブロンは少し笑って言った。
「四属性、八属性がなくて困るだろうね。
もう少し小型のものに姿を変えられればな。」
ファラはふと思いついた。
小竜リールの力を借りられまいか。
「ヱイユに出した手紙の返事が来るだろう。
出発の時刻はいつ頃を考えている?」
「潜行なら、やはり日没でしょうか・・・。」
師が頷いている。
ファラもまた、シェブロンと話したいことがたくさんあると気が付いた。
「心配事があれば何でも聞いていきなさい。
今渡せるだけの力も授けよう。
日が沈むまで、私の部屋で最後の講義としようじゃないか。」