The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 07 節「七宝(しちほう)身に具して」

第 14 話
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「飛翔に慣れておきたいですね・・・。」

城へ帰る道々、フィヲはずっとそのことを考えていた。

サザナイアの体と装備品に「ゾー(重力)」をかけてやれば飛翔することは可能となる。
ファラかフィヲが込めればいいだろう。

しかし思い通りに空中で戦うためには、彼女自ら「クネネフ(風)」や「トゥウィフ(衝)」を発して飛び回らなければならない。

その上、天を住処(すみか)とする悪魔どもを相手に、自在に剣が振るえるだろうか?

「少し練習に付き合ってもらえないかしら・・・?」

フィヲは時間が許されるならば何時間でも、何日でもサザナイアと空中戦の練習をしたい気持ちである。

前を歩くファラを呼び止めようか迷った。

ファラの方では別のことを気遣っていた。
今さっき発注してきた装備品のことである。

「ファラくん・・・。」
「フィヲ。」

急に振り向いたファラと、顔を突き合わせそうになって、フィヲは顔を赤らめた。
ファラも一瞬慌てる。

気持ちを落ち着かせ、ファラから先に切り出した。

「サザナイアさん、装備品の完成まで、フィヲと一緒にリザブーグで待っていてください。」

サザナイアは驚いた。
フィヲはひどく心配そうな顔を見せた。

「どうやって行くつもり!?
“光”になるためには、『テダン(電)』『ググ(磁)』『トゥウィフ(衝)』と『ドファー(変)』がないと!
あなた、『テダン』も『ググ』も使えなくなっているのよ!?」

フィヲはシェブロンが言った通り、ファラが魔法を「失った」のではなく、「使えなくなっているだけ」だと信じるために必死だった。

また、着地後にはヒーリングが必要だ。
自ら“光”となって移動する消費エネルギーは限りなく総力に近い。

フィヲならば大地からでも大気からでも魔力を集められるが、ファラは『ドゥレタ(地)』と『クネネフ(風)』を奪われているのだ。

「絶対に無理はしないよ。
ぼくには『ニムオー(有翼獣)』がいるじゃないか。
ヱイユさんと合流して、きみとサザナイアさんが来ることも話しておく。
作戦を考えておくから。」

歩いてリザブーグ城に戻った3人を出迎えたのは、ミナリィ港から急ぎ馬車でやってきたヴェサとバミーナ、ナーズンだった。

「よかった、間に合った・・・!!」

女性の戦士二人は、ヴェサの手を引いてゆっくり歩いてきた。

「フィヲ、お前はこれから、どこへ行くって・・・!?」

老婆ヴェサの顔を見ると、フィヲは駆け出し、その老いて小さくなった体を抱きしめた。

「おばあちゃん、ごめんなさい!
危険な長旅をさせてしまって・・・!!」

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