The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 07 節「七宝(しちほう)身に具して」

第 09 話
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1対1で技を競う打ち合いならば、サザナイアには剣一本で十分だった。
たとえ相手が鋭利な武器を持っていても、攻守一体の彼女の戦法には問題にならない。

武器ごと、鎧ごと斬り捨てる。
これがサザナイアの力量であり本領だ。

最初から武器破壊や戦意喪失を狙っていくファラとはやり方が異なる。

また、華麗に描かれた剣の線、真剣に、懸命に繰り出される一太刀一太刀に押されてみると、敵味方の周囲もさることながら、誰より対戦相手が魅了されてしまうらしい。

まるで高速回転する機械のようでもある。
彼女と手合わせする者は皆、巻き込まれまいと逃げ腰になった。

そこを見事に捕らえてしまう。
サザナイアの剣閃はおどしでもフェイントでもない。
空振りなしの「必中攻撃」だった。

真面目な性格と、強さへの探求心によって魔法も少し使える。
アンバスが教えてくれた。

ルアーズには真似できない点である。

クネネフ(風)、トゥウィフ(衝)、ロニネ(防)の3つだが、自分の魔力に限界があることを知り、最も有効な場面にだけ撃った。

とはいえ魔法使いの器ではない。
どんなに魔法の能力を引き出し、伸ばしていっても、魔法だけの応酬にはとても間がもたないのだ。

仮に総合力の互角な相手がいたとして、距離を取られ、遠くから撃ち込まれでもしたら力を出し切れずに敗れるだろう。

LIFEの一行に加わって幾多の戦場、あらゆるタイプの敵、そして味方の戦い方を目にした。

どちらの陣営にも、彼女では到底刃が立たないと思える使い手がいた。

対戦相手の得手不得手はあるかもしれない。
これまで苦手と思われる敵は自分にまわってこなかった。

戦略として有利に戦える人選がなされていたのも事実である。

しかしこれからは、特に目前に迫った『長老の森』での戦闘は、相手を選んでいる暇などまずないだろう。

体が震えて立ち竦(すく)んでしまった相手。
サザナイアは意識のないテンギを見たゆうべの晩から、彼と戦うイメージを常に描き、もっと強く、もっと研ぎ澄まされていくための戦い方を求め、模索し続けていた。

「フィヲちゃん、わたし、飛べるかしら・・・。」
「大丈夫よ。
あなたにはクネネフとトゥウィフがある。」
「わたしはゾー(重力)が使えない・・・。
いつもあなたの力を借りるのでは、足手まといになってしまうわ。」

ファラは、心から尊敬し信頼を寄せるサザナイアに自信をなくさせたくなかった。
また、最も危険な地で共に戦うと志願してくれたことに感謝していた。

「ぼくの鎧にも飛翔の力を宿しているんです。
装備が整ったら、フィヲと二人で魔法を込めますよ。」

サザナイアも感謝しつつ、ふと、ある光景が思い浮かんだ。
それは戦場にあって、敵に上空へ逃がれられ、追いきれずにいる自分が、鋭く何かを放とうとする場面だった。

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