The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 07 節「七宝(しちほう)身に具して」

第 06 話
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ザンダの周りに集まったのは、ムゾール=ディフ、アドミラル=ハムヒルド、キャプテン=レスタルダ、コダリヨン、ラゼヌター、メッティワ、オオン、リルー、ジシュー、ズンナークといった、生粋(きっすい)の軍人たちである。

あまりにも若いゼオヌール公だが、皆、彼を頼りに思っていた。

「ハムヒルドさん、レスタルダさんはミナリィの艦隊を率いてウズダクを頼みます。
ズンナークさん、リルーさん、オオンさんはセト国に入ってルビレムさんをロマアヤに戻してください。」

3人はこれを聞くと、さすがに話の腰を折って出ざるをえなくなった。

「なぜわたしたちがズンナークと行かねばならぬのだ?」
「オオンと作戦を共にするのは分かる。
だがズンナークの下に付けるのだけはやめてくれ。」

ザンダはニヤリと笑った。
ズンナークはひどい言われようだ。

「だまっておれ。
ザンダ公のおっしゃる通りにしろ。」
「お前には散々迷惑してきたのだ。
わたしたち二人で行くから、どこか他へ行ったらどうか。」

ムゾールは腕組みをしてただ聞いていた。
コダリヨンが口をはさむ。

「たしかに、欲を言えば望みはあるかもしれない。
しかしセトの民は君たちを歓迎するだろう。
考えてもみたまえ、まさかロマアヤへは入れまい。」

実際そうなのだ。
彼らは最もロマアヤを苦しめたリダルオ南征衝の大将と右将・左将だったので、どう繕っても公国府の民には受け入れてもらえないだろう。

それでザンダはルビレムをシャムヒィから公国府へ戻すため、3人のセト行きを考えた。
老ムゾールは大いに満足した様子だった。

「じゃあ、コダリヨンさんは最初からロマアヤに入ってもらえませんか?
あなたの名は勇将として聞こえていて、敵陣の大将ではなかったから。」

とはいえ本人にしてみれば重くのしかかる任地である。
攻撃したことがないわけではない。

多少不安そうに、承諾しかねている様子を見て、ムゾールが肩を叩いた。

「ザンダ様、わたくしがコダリヨン殿を民に紹介します。
ロマアヤ復興の任をいただけないでしょうか。」

頼りにしていた爺やであるだけに、ザンダは彼の口から帰国の意思を聞かされると、さすがに動揺してしまった。

「・・・メンバーは、おれだろう、ナーズンとバミーナが昼前には到着。
現地にはベリオング、ダッツ、ボートルがいて・・・。」

近くで見聞きしていたシェブロンが、笑みを浮かべて話の輪に入ってきた。

「陣容を挙げてみると、メレナティレにはファラくんの選抜部隊やナズテインさんの部隊から出た精鋭がいるようだね。
彼らは元王国の騎士だから、オルブームへ連れていけないだろう。
トーハさんはじめ、技師の方々には通信網の保守点検で動いていただくことになる。
ドガァ(ライオン)は連れていくとして、きみが心配しているのは、相談できる存在か?」

その通りであった。
ザンダがムゾールに頼るのも、全面的に味方であって、かつ経験豊富な、「総帥」という存在だからである。

「そうした人材を育てることは国を強くする上で重要だよ。
ただし一朝一夕に育てられるものでもない。
今は温厚なムゾールさんだが、昔は大陸に名を馳せる猛将だった。
・・・心細いかもしれないが、今回はルビレム君直属の戦士諸氏の中から、次代のロマアヤ軍を委ねられる資質を、きみの目で見つけ出してきなさい。」

とても苦手な課題を出されてしまった。

実はザンダにとって、これがシェブロンから与えられた最初の訓練だったといえる。

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