第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」
まばゆい閃光が広がった。
悪魔たちは射抜かれて消えた。
実体のある魔獣や魔人たちは、しばらく視力を奪われた。
ファラとサザナイアは言われた通り、目を手で覆っている。
術者であるフィヲは、閃光が通り過ぎて最初に目を開け、サザナイアに近付いた。
「先に城へ戻っていてください。
あと10を数えたら目をあけて大丈夫よ。
体が軽くなっていますから、心配しないで、ゆっくりと降り立って。」
彼女はにっこり微笑み、サザナイアの体を木々より高く浮かび上がらせると、西の上空へ、光に乗せて飛ばしてしまった。
「・・・大地よ・・・。」
フィヲの体が緑色のエネルギーに包まれた。
ファラは目を開けて歩み寄り、フィヲの両手を取った。
「ぼくの力を使ってほしい。
お互い明日があるから。
ここで使い切らないで。」
今度は水色の光が二人を包んだ。
フィヲはとてもうれしそうに笑顔を見せた。
そして頷き、ファラの手を握り返して、二人してサザナイアの後を追った。
“LIFE”のバリアによって隔てられ、近づけずにいた竜族は、閃光にやられて地上へ落ちた。
ファラとともに飛び立つ寸前、フィヲはバリアを外側へ膨張させて闇の一族を一掃した。
こうして北の大陸から集い来た魔の軍勢の第一波は鎮まったのである。
何が起きたのか分からず、リザブーグ城の屋上に座り込むサザナイア。
その上空へ無事到達し、離れ離れにならぬよう、強く抱き合っていたファラとフィヲは、そっと目を開いて相手を見つけると、中天にかかる13日目の月に照らされて、どちらからともなく口づけていた。
情に駆られることもなく。
互いに恥じ入ることもなく。
同じ一つの目的を成ずるために、どちらが欠けても叶わない。
肩を抱いたファラの手をフィヲが掴んだ。
あまり強く握るので、ファラは驚いて目を開けた。
消耗で、浮遊の魔力が切れかけているのだ。
フィヲの発動を収束させ、今度はファラの魔力で徐々に下降する。
「今は考えないで。
誰も追っては来ません。
明日の朝早く、ここでもう一度会いましょう。」