第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」
悪魔たちは長老の森に集結していたはずである。
「長老の木」はどうなったのだろうか。
ヱイユは無事なのか。
不安の翳が差す。
だが、ここを突破して進む以外ない。
フィヲが敵の数を数えている間に、ファラは一帯の空飛ぶ魔族に斬りかかっていった。
飛翔の勢い、速度がこれまでとは違う。
「ファラくん・・・!!」
無謀な戦いだけはしてほしくない。
今度はサザナイアがフィヲの手を握って言った。
「今の彼は誰にも止められないわ。
危険を感じたらあなたが援護するのよ。」
フィヲは頷いて、周囲を見定めていった。
“LIFE”の魔法陣は、味方には力を与え、魔族にはダメージとなる。
半球状の七色に光るバリアが、フィヲを中心として拡がっていく・・・。
倒れた悪魔に、サザナイアが一太刀浴びせた。
彼らは世界に遍満する魔性の化身だが、正の魔法陣で浄化を行えばこちらの力に替えられる。
悪魔との戦いは、魔性エネルギーを“LIFE”の側へ転換する戦いとも言えた。
澄んだ青空のような空間が現出していた。
不思議なことに、フィヲが作り出したバリアは外から見ると七色だが、内から見ると青いのである。
『私も動いて戦える程度に、強固な守りでなくていい、どうかみんなを守って・・・!!』
半球はかなりの領域にまで拡がって止った。
ファラが存分に空中で戦える広さはある。
フィヲも駆け出した。
「さあ、大地に還りなさい・・・!!」
一匹、また一匹と、魔族は重力で落とされた。
それらが次々と大地に吸われていく。
剣を振るいながらサザナイアは驚いた。
秋の枯れゆく森に、緑色のエネルギーが満ち満ちてきたのだ。
「すごい、これなら、『長老の森』を救えるかもしれない。」