The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」

第 18 話
前へ 戻る 次へ

南側に、カーブを描いて旧リザブーグ王国時代の外壁が見える。

国境を表すこの壁は、北へ行くにつれて山の斜面に埋もれ、境目がはっきりしなくなっていた。

大声で呼べば警備中の兵士が答えるだろう。

見上げると、月に雲がかかり始めている。
北からの風が木々の間をすり抜けてきた。

「お天気が崩れるのかしら、雨が降りそう・・・。」
「うん・・・。
フィヲ、傘を取りに戻るかい?」
「いいえ。
自然現象を味方につけていくくらいでないと。」

その時、ザッザッザ、という走る足音とともに、身に着けた鎧が擦れ合って鳴る金属の音が近付いてきた。

「走ってる・・・。
どなたですかー??」
「はあっ、はあっ、ファラくん、ごめん・・・!!」

ファラはすぐにサザナイアと分かって安心したが、フィヲは駆けていって手を取った。

「サザナイアさん、ご無事ですか!?」
「ええ・・・。
私、ミルゼオ国に入ってしまっていたみたい。」

相手の状態を第一に気遣うフィヲの姿を見て、ファラも急ぎ駆け寄った。

「本来ならばぼくが最後まで森に残るべきでした・・・。
この先に敵はいましたか?」
「そうなの・・・。
これを。」

巡回機から取り出したデータチップを手渡した後、しばらくは呼吸を整えなければ話ができないらしい。
涼しくなった夜分に、汗が流れるほどだった。

「メレナティレの紋様が入っている。
どれくらいの機体ですか?」

サザナイアは少し笑って、手振りで小さい機体であることを示した。

「探索機が、国境の向こうにまで入っていたとは・・・。」
「サザナイアさん、汗が冷えてしまう。
これ、上に羽織ってください。」

フィヲは、ファラにかけてもらったマントをサザナイアに着せてあげた。

「ありがとう・・・。
実はファラくん、この先に地面の抉(えぐ)られた跡があって、・・・その中に、テンギが眠っているようなの。」
「テンギ!?
今、気を失って?」
「呼吸はしていました。
起き上がれる状態かどうかは・・・。」

ファラがすぐに決めかねている様子だったので、フィヲが言った。

「見に行きましょう。
一時的に封じ込めてしまってもいいわ。」

テンギと聞いて、とっさに激しい戦闘を覚悟したファラだったが、フィヲが冷静なので落ち着くことができた。
捕縛して城へ運ぶにも、まずは危険を取り除いておかなければならない。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.