第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」
タフツァの説明が続く。
「『長老の森』への人選もありますので、ここでは全体の動きをお話しします。
まず、明日の朝までに、ミナリィ港とリザブーグ、メレナティレをつなぐ通信網が開通する予定です。
これは元々リザブーグ王国が使用していたもので、メレナティレの技師たちが開発しました。
単線で結ばれていたところに中継地点を設けることで、電気ネットワークが攻撃された場合にもすぐ分断されることはありません。」
リザブーグ城へシェブロン一行が入城していた頃、ミナリィ付近まで攻め寄せていたナズテインは、上陸作戦の成功を喜ぶ間もなく、次の作戦を展開し始めていた。
メレナティレに向かわせた部隊との連携を図ったのである。
彼が最初に持った部下のうち、第十一部隊長のエッダイーグは、機械兵器と機動車を駆使した戦闘に巧みなメカニックだ。
トーハら技師の力を借りて、避難する住民たちの盾となり、主砲となった。
メレナティレの残党を一手に引き受けたのだ。
そしてもう一人の部下ジスヒルは、第十二・騎馬部隊の長である。
彼らが早馬をつなぐ。
技師たちを馬車に乗せて護衛した。
封印の地ディスマの東、ちょうどミナリィとメレナティレの中間地点に一つ。
古(いにしえ)の封印に使われた「北東の塚」付近に一つ。
更にこれらの開通後、リザブーグ城の西の森の中にも一つ、中継基地を置いた。
旧王国の3つの市街は今後の作戦において一つも欠くことのできない要衝となる。
それらを結ぶ新しい3つの拠点は、電気ネットワークの基地であると同時に、広大なリザブーグ国を守る砦にもなろう。
できるだけ早く隣国ミルゼオや、北の大陸オルブームとの同盟関係を築いていきたい、というのがタフツァの考えであり、ナズテインの考えでもある。
「通信は電気の速度で可能になります。
しかし人の移動には、ミナリィ~メレナティレ間が馬車で10時間。
リザブーグ~メレナティレ間が同じく7時間。
ミナリィ~リザブーグ間は3時間半を要することに変わりはありません。」
王国出身のルアーズには距離感がよく分かった。
今後メレナティレの戦車が使えるようになっても、馬車の倍速程度だ。
フィヲが発言に立った。
ロマアヤの戦線を経験しなかったメンバーにとって、これは驚くべきことだ。
遠慮がちにおずおずと話す印象の彼女が、毅然とした態度で会議に臨んでいる。
「わたしの『キュキュラ(総力)』で、負傷したファラくんを連れてメレナティレからリザブーグまで約5秒で来ました。
魔力計が算出したわたしの魔力の合計が7800(mw)とすると、自分一人ならその半分で移動できるはずです。」
皆おどろいて騒然となった。
ただ一人シェブロンには、魔力計で計りきれていない分も含めて、フィヲの潜在力が見えていた。
「ヴェサさんの『光魔法』を応用したんだね。
明日、こちらへ来られるはずだ。
タフツァ君も、ソマも習っておくのがいい。」