The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」

第 09 話
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他の外護(げご)メンバーの誰よりも早くリザブーグ城へ馳せたファラは、息は切らさず、頬を上気させて、多少汗ばんで師が待つ旧王の間に入った。
この広間はシェブロンの入城以後、“獅子王の会座”と呼ばれている。

ファラは師の目に合うと、いたたまれなくなって駆け寄った。

「先生・・・!!」
「ファラ君、よく世界を駆けたね。
ありがとう。」

涙が溢れ出る。
フィヲも落涙して師の手を取った。

可愛い男女の教え子を、両手で抱きかかえるようにすると、二人とも声を出して泣き出した。
この師弟は親子以上に年が離れているのだ。

「よしよし、赤ん坊の頃の二人を思い出す。
だが今はお腹が空いて泣いているのではないね。
・・・よく分かっているよ、立派になったなあ、“LIFE”のために涙を流すとは。」

あまり泣くので、ザンダはつられて声を出して泣いたが、老ムゾールとソマがタオルを持ってきてくれた。

「悪鬼魔民も恐れ成すファラ殿だが、こう見るとまだ子供だのう。」

周囲が笑ったので、ファラとフィヲも恥ずかしくなって笑った。

「少し休んでいなさい。
他のお仲間は?」
「森中に分かれて敵を探していましたので、順に戻るはずです。」

やがてリルー、オオン、メッティワが入ってきた。
3人とも、初めて会うシェブロン博士に深く辞儀したが、優しい視線に射抜かれるような鋭さを感じて足が震えた。

こんなにも強い人間をかつて見たことがない。
もしも対峙したならば、得意の剣撃を繰り出すことなく敗れるだろう。

ラゼヌターとコダリヨンも来た。
ズンナークも来た。

なぜか、目も合わせられぬほどに恐ろしかった。

シェブロンの方から声をかける。

「このたびはありがとう、皆、セト国の大将軍ではないですか。
勇猛は前々から聞こえていましたよ。」

そう言われると、過去の罪科を思い出さざるを得ない。

ズンナークが進み出て述べた。

「シェブロン先生、わたくしはかつて、デッデム配下の将として、ロマアヤ公国をさんざんに苦しめてしまいました。
殺生もしました。
せめてもの償いと思い、ザンダ殿の配下となりましたが、本当にLIFEの一員に入れていただいていいのでしょうか。」

シェブロンは、厳しい表情ながらも包み込むようにして言った。

「デッデムが助からなかったことは聞きました。
テンギに生命を奪われたのでしょう。
痛ましいことです。
誰人であれ殺生は許されません。
しかし、あなたは生きて、すでに“LIFE”を守護する将となられた。
最後まで今の志を全うしなさい。」

「はい!」と威勢のいい返事をしたっきり、ズンナークは顔を上げられなかった。
男泣きに泣いているのだ。

ズンナークの配下だったジシューも、シェブロンに言われたことを噛み締めて身が震えるようだった。
リルーとオオンもはらはらと泣いた。

デッデムの側近だったラゼヌターとメッティワは、なお重ねて謝罪しなければという気持ちに駆られたが、シェブロンがそれを制止した。

「全て伺っていますよ。
大丈夫、前を見て歩くんです。
“LIFE”を知る前と、知った後で、これだけ変わったという姿を皆に見せていきなさい。」

元右将と左将の彼女たちは、ピタリと声を揃えて返事した。
その目には真剣な輝きが溢れていた。

シェブロンはにっこり笑って頷いた。

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