The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」

第 05 話
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日没までにミナリィ港へナズテインが入ると、対応の速度はぐんと上がった。

彼は出陣前から王国内の電気ネットワークを利用できるよう準備を進めていた。
直属の部下や、他の部隊の者に、次々と指示を出していく。

ヌザルムには町の警備を、レヂョウには森の警備を。
レンガーには住民たちへの対応を。

そして第一部隊の部下たちにはネットワークの開通を命じた。

彼が本拠地として選んだのは、入国管理部門が置かれていた建物で、ロマアヤの船が停泊しているドッグのすぐ手前にある。

王国機構の崩壊により、路頭に迷っていた人々も、ひとまず収容することができた。

バミーナが本拠を訪れる。

「はじめまして、ロマアヤの兵、バミーナです。
今夜はミナリィの宿に滞在するつもりだけれど、お手伝いすることはありますか?」
「LIFE騎士団のナズテインです。
30名から成る部隊が4つ、ここへ来ています。
町の内外の警備と、住民の案内を立てました。
あなたの他に何名いらっしゃいますか?」
「全部で3人です。
女兵士2人と、ヴェサさんという高齢の魔法使いの方がご一緒です。」
「出発は明日、何時頃を予定していますか?」
「午前中に。」
「それでは今夜できるだけ早くお休みになってください。
町のことは全てお引き受けしましょう。」

バミーナは宿を経営する家族の老婦人が安否を気遣っていた夫妻の消息を、ナズテインに尋ねてもらうことにした。

「お任せください。
明日の朝にはネットワークが開通する運びになっています。」
「ネットワーク!?」
「ええ。
電信が可能となる予定です。」

リザブーグに比べるとロマアヤは機械技術の発展が遅れている。
バミーナはそんなことができるものかとにわかには信じがたかった。

「出発前にここへおこしください。
お仲間の声も聞かれると思いますよ。」

彼女が宿に帰ってしばらく経つと、ヌダオン=レウォが引き上げてきた。

事前に知らせを受けていたナズテインは、身支度を整え、自ら立って行って迎えた。

「ヌダオン殿、私はリザブーグ出身のLIFE騎士で、ナズテインと申します。」
「おお、レボーヌ=ソォラでのご活躍、聞き及んでいるぞ。
本国は万事、収まったのか?」
「はい。
皆さんのおかげです。
作戦通り遂行いたしました。」
「ほほう。」

メビカから連れてきた部下に馬を任せて船まで運ばせている。
彼も船へ戻ってよかったのだが、ナズテインに会うため、わざわざ足を向けたのだ。

彼は若いナズテインを見て、30年前の自分にもこんな部下がいたら、ワイエン列島の覇権を握れたに違いないと思って惜(お)しがった。
その野心も今ではすっかりなくなって、各地からよい人材を集めるシェブロンという人物のことが羨ましかった。

ザンダに頼まれて上陸作戦を支援してきたが、このまま帰るのではつまらない。
頭領ヌダオンは一度シェブロン博士に見(まみ)えたいと考えるようになっていた。

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