第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」
ディスマへ派された騎士長ラディオネは、道中、メビカの頭領ヌダオン=レウォと出会い、リザブーグへの入城を進言した。
だがヌダオンは、ミナリィ港に置いた船が心配だからと、港の守備につくことを申し出た。
作戦を終えた初代LIFE騎士団は、ナズテインを中心とする第一部隊とレンガーの第二部隊、ヌザルムの第六部隊、レヂョウの第九部隊がミナリィに残ることになった。
それ以外の部隊は全てリザブーグへ引き上げる。
また、上陸作戦で大仕事を成したナーズン、バミーナは、ヴェサの体力を気遣って途中で行軍から離れ、ミナリィへ戻っていた。
彼女たちはヴェサの強い要望から、明日リザブーグへ向けて発つつもりでいる。
この晩はミナリィの宿に泊めてもらい、宿主の家族とよく話してロマアヤの意思やLIFEについて語っていった。
「メレナティレは自ら崩壊してしまいました。
王国に仕えた騎士たちは、一時リザブーグへ護送しましたが、新しい任を帯びて必ず戻ってきます。
それまでここの暮らしはロマアヤ公国が支えていきます。」
王国の港ではあるが、海軍は持っていなかった。
貿易を主とするミナリィには、旧来他国の人の出入りも多い。
そのため宿屋は主義や信条に対して中立的な立場をとっている。
「レボーヌ=ソォラもロマアヤも、皆さんのご活躍で内戦を終えられたのだとか。
ここは貿易で栄える港ですから、お隣のミルゼオ国とも仲良くしていかなければやっていけません。
メレナティレ体制のままでは、国家はダメになっていたでしょう。」
宿のおかみさんがそう漏らす。
メレナティレ兵が宿泊していた頃は皆、思っていても言えなかった。
続けてヴェサが述懐する。
「リザブーグは広い陸地の真ん中にあるからね。
他国が敵に見えるのさ。
メレナティレは港を作ったというが、やるならもっと早くから開けばよかったんだ。
海に面していながら他国と交易せず、孤立して権力を欲するようになった。
それと比べてミナリィは土壌が健全だよ。」
宿の人々の表情が和む。
ここで生まれて暮らし、働いているのだから褒められればうれしいのだ。
「つい先月までロマアヤで世話になったが、あそこは大したものだ。
大国に睨まれて、大陸の端っこまで追いやられていたのが、盛り返して講和を果たした。
これからはロマアヤとも交易するのがいい。」
次いでバミーナが説明する。
「カザロワ統治下だったとはいえ、同じ国内でメレナティレのこともご心配でしょう。
現地では技師たちが中心となり、機械兵器の回収と、危険な兵器の解体、機械の平和利用を実現しようとしているのです。
わたしたちの仲間も船で入りました。
ここと同様、ロマアヤが復興までのお手伝いをしますので、もしご親戚などがありましたらおっしゃってください。」
すると一人の老婦人が尋ねた。
「娘夫婦が住んでいたの。
大丈夫かしら・・・?」
「すぐに連絡が取れるようにしましょう。
お名前をお聞かせください。」