第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」
王国騎士の歌が聞こえてきた。
ファラはフィヲに向かって口に人差し指を当て、耳をそばだてた。
おお暁の闇深く
静けき森に
軍靴鳴り
大なる魔物
荒振(あらふ)れば
剣光閃(ひらめ)く
王家の誇り
五芒星
五芒星
「あれはリザブーグ王国の歌だね。
士気を鼓舞しているんだ。」
フィヲは軍隊の行進に共感を持てなかったが、ファラがあまりにうれしそうなので相槌を打った。
すると、何度か聴いたことのある歌詞の一部が違って聞こえてきた。
世界の盾なる
我なれば
頭上に輝く
厳護の誉れ
LIFE騎士
LIFE騎士
ファラは感動を覚えた。
フィヲに軽く合図して駆け出すと、騎士たちを驚かせぬよう、まず声をかけた。
「おーい!
みんなー!!」
行進の足が緩まり、一斉に振り向く。
「ファラ殿!」
「探しましたぞ。」
「あなたのおかげで、ご一行は無事、入城されました。」
ファラの瞳が輝いた。
「よかった!
ぼくも一緒に行くよ。
朝まで立っていたって構わない。」
すると騎士長のムゾードフは笑みを浮かべて言った。
「シェブロン先生がお待ちかねです。
どうか速やかにお戻りください。
わたしたちはそのために参りました。」
「なんだって!?
お怪我をされたわけじゃないだろうね?」
「いいえ、大変お元気なご様子で・・・。」
耳元へ寄り、声をひそめて言葉を付け足す。
「大切な会議を行う、との仰せでした。」
「わかった、ありがとう。
テンギはどうやら近くにはいないみたいだ。
それでも気を抜かないで。」
「はい、交戦はしないようにと、タフツァ殿より命ぜられておりますので。」
その様子をフィヲは微笑ましく見ていた。
ファラは年齢を問わず、リザブーグの騎士たちが大好きだった。
LIFEに連なる騎士たちを守ることこそが、父ツィクターへの孝養であると信じているのに違いない。