第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 06 節「輪廻の支配者」
東の河畔でアンバスと休憩していたルアーズは、木々の間から夜空を眺めて、シェブロン一行の入城は果たせたかと考えていた。
近年、機械兵の導入で川の水はすっかり汚れてしまっていた。
そこでアンバスは、ルアーズのためにパティモヌで純水を抽出して水筒に注いでいるのだった。
旅仲間のサザナイアは敵を探してどこまで行ったか分からない。
真面目な性格で、背が高く、とても美しい容姿を持っていながら、額は汗ばみ、キラキラと輝いている。
自分が女であること、美しいということをまるで意識しないようなのだ。
そういう彼女を思うと、ルアーズは笑いが込み上げた。
涙が出るほど可笑しいのだ。
獲物を見つけた雌(メス)のライオンのようでもある。
「誰もあの娘(こ)には敵(かな)わないわね・・・。」
二人とも、まずサザナイアのことを心配したりしない。
後で遠くまで探しに行かなくてはと、そっちの方が心配になる。
「ルアーズ。
森に灯りが・・・!!」
一瞬警戒したが、すぐに味方のものと分かった。
ルアーズが駆け出すと、隊に出くわした。
騎士長ダジースカイの一団だ。
「あなたは・・・。」
「ルアーズです。
城下はどう?」
「無事、お迎えできました。」
「よかった、本当にありがとう!
これからどこへ?」
「森の警備を交替するようにと、シェブロン博士のご指示です。」
「先生から!?
わたしたち、お城へ帰ればいいのかしら?」
「はい、後はお任せください。
ところでファラ殿はどちらへ・・・??」
「さあ・・・。
フィヲちゃんと一緒のはずだけど。
あの子たちも、どこまで行ったかさっぱり。」
「分かりました。
この方面はお任せください。
お二人ともお疲れでしょう。
どうかリザブーグへ。」
「仲間が一人、戻って来ないのよ。」
「私たちの部隊の他にも、森中で騎士たちが警備に立ちます。
城へ行けば合流できるでしょう。」
ルアーズはアンバスと顔を見合わせ、騎士たちの言う通り、城で落ち合うのが一番だと思った。
「危険な術士も、魔人たちもここにはいないわ。
どこへ行っても、ファラくんが壊した機械の残骸だらけ。
でも『千手の鬼神テンギ』が依然、行方不明。
・・・気をつけてね。」