第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
赤くはらした目に、誇らしげな表情でザンダが通りかかる。
ノース・イーストタウンにいたソマは、ザンダを見つけて微笑み合った。
ついに“LIFE”の師シェブロンをリザブーグへ迎えることができたのである。
ソマも胸を熱くしたが、それ以上に、無数の少年少女たちと一緒に、師の元へ駆け寄りたかった。
手を握ってもらいたかった。
だが今は子供たちが師との一期一会の出会いの瞬間を刻んでいる。
『先生、私は4歳の時に入門させていただいてから、先生の娘として生きることができ、とても幸せでした。
これからは後に続く多くの後輩たちを先生の元へお連れします。
必ず先生のように立派な指導者に育てます。』
思いがけず、シェブロンと目が合った。
強く励ますように、そしてこれまでの苦闘の日々を全て知ってくれているように、師は笑って頷(うなづ)いてくれた。
「先生ッ・・・!!」
その声に、少年たち、少女たちが振り向いた。
ソマが涙を流しているのを見て、いかに偉大な人を迎えているかを知った。
『ソマ、よく頑張った。
長い戦いで疲れているだろう。
わたしは君が幸せな生を送ることを願っている。』
近くにいたヤエも涙を流した。
“LIFE”の師弟に生きることが、これほどまでに強く深い絆を生むものかと感動しているのだ。
このまま泣き崩れていては弟子の役目が果たせない。
ソマは顔を拭って立ち上がり、笑みを湛えながら皆を導いていった。
ノース・イーストからノース・ウェストに入る。
デグランは緊張して最敬礼していたが、子供たちが親しく師を求めていくのを咎めることはできなかった。
反対に、子供たちが素直な心で師を求めていく姿勢に、自分も見習うべきだと思った。
すぐ近くをシェブロンが通った。
「あなたはアミュ=ロヴァの方(かた)ですね。
遠くからはるばる駆けつけてきてくださったことを、いつまでも忘れません。」
こう言って深々と頭を下げた。
デグランは恐縮して、役目も忘れて返事した。
「先生、私もLIFEに入門させてください・・・!!」
その一言で精一杯だった。
師はもう一度辞儀して頷き、固く拳を握って見せた。
デグランも固めた拳を高く上げ、男泣きに泣いて師を見送った。