The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 56 話
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ザンダの馬車が入ってきた。
街中から歓呼の声が湧き上がった。

すぐ後ろにシェブロンの馬車が続いている。

子供たちが馬車に駆け寄り、シェブロンを一目見ようと押し合った。

一番前にいた子らが急におとなしくなり、それに後ろの子が気付く。

「どうしたんだ?」
「ぼ、ぼく、せんせいと目が合った。
とても優しいお顔だった・・・。」

そう言って感激しているのである。

車が止った。

リザブーグに生を受けた、無数の“LIFE”を継ぐ者たち。

シェブロンの瞳には、大人も子供も、老人たちでさえも、皆“LIFE”の子に思えて愛(いと)おしかった。

抑えがたい感慨に、自分の方へ伸びてくるたくさんの手と、ひとつひとつ心を込めて触れ合った。

「夕飯の時間だろうに、みんなありがとう。
これからお世話になります。
・・・おお、元気だね。
また会おう。
上級生は明日、お城へいらっしゃい。
学校が終わってからでいいよ。」

シェブロンが車から降りたので、ノイも降りる。

御者の役を引き受けた老ムゾール=ディフは、馬から降りて手綱を引いた。

前も後続車を離して行くわけにいかない。

ザンダが降りた。
片腕のハムヒルド、レスタルダも降りた。

わー、という歓声に包まれた時、ノイは感涙を抑えがたくなった。
師が毅然として皆を励ましているのに、自分だけ泣いているとは情けなくもある。

シェブロンはわざとノイの顔を見ずに言った。

「将来、騎士となる子は君にお願いするよ。
全員、立派に育ててほしい。」
「はい、必ずそういたします・・・。」

後は声にならなかった。

ザンダも涙を流しながら歩いた。
そして時々、鋭い目付きになって、周囲に敵がいないか警戒した。

だがタフツァの布陣もまた完璧だったのだ。

城下町には敵など一人もいなかった。

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