第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
敵方にも猛将はいるものだ。
両手斧を持った、ムーモラという戦士が壊乱を狙って飛び出した。
ラゼヌターが他の相手と交戦中だったので、近くにいたコダリヨンが受けて立つ。
しかし大斧の一撃は剣撃の比ではなく、決して弱くないコダリヨンの剣が真っ二つに折られて地面に刺さった。
返す力で斧が再び飛んでくる。
飛び退こうにも間に合わない。
盾で身を守るしかない。
それでも到底、防ぎきれないと覚悟した。
ズゴゴゴッ・・・!!
コダリヨンの盾は木っ端微塵になった。
なんと重たい一撃か。
金属の小手にまで食い込んで、左の上腕部に深い傷を負った。
ラゼヌターが二人ほどの兵を薙ぎ払って振り向いた。
「コダリヨン、我が剣を取れ!」
今持って戦っていた剣を地面に突き立てると、ラゼヌターは盾だけになってムーモラを引きつけた。
上段に構えた大斧が振り下ろされる。
まさか盾で避(よ)けようとは考えていない。
彼女は振り下ろされる重量と重力に逆らおうとはせず、かなり身を低くまでかがめて斧の斬撃を和らげた。
そしてムーモラが下まで振り抜いた所で反撃に出た。
コダリヨンの顔を見る余裕はない。
「今打たぬでいつ打つのか!!」
盾に備え付けていた短剣を、鞘に入ったまま鈍器として打ちつける。
といっても鎧を打ち破るほど腕の力はないのだ。
盾から素早く身を引いた彼女は、ムーモラの側頭部目掛けて強突を喰らわせる。
相手が上体のバランスを崩す。
コダリヨンの仕掛けはこのタイミングとなった。
ムーモラの兜が割れた。
「とどめ、もらったー!!」
まるで隼(ハヤブサ)のように、横からルアーズが駆けてきて強蹴し、倒れる相手の上に馬乗りとなり、瞬(またた)く間に両手を引っ掴んで縛り上げてしまった。