第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
オルブーム大陸の中心付近でヱイユが魔群を相手に戦っている頃、リザブーグ周辺の森ではファラが王国兵と戦っていた。
いよいよシェブロン博士を城に迎えるのだ。
ファラは師のために戦えることが嬉しくてならなかった。
頬を紅潮させ、快活に剣を振るう。
兵団にぶつかると、速攻で勝負を決め、LIFE騎士団の門を叩くよう導いた。
ロマアヤ艦隊が上陸した当初、ファラはフィヲを連れてテンギを追跡していた。
翼獣ニムオーの記憶に映っていた川を探しもした。
そしてヱイユがテンギを埋(うず)めた穴、その近くを流れる川を見つけ出した。
しかし、どこを探してもテンギに遭遇することはなかったのである。
一時空を覆っていた魔族の群、有翼獣の群は北へ飛び去ってしまった。
「フィヲ、どう思う?」
「うん。
やっぱり、北の大陸オルブームに向かっているのよ。
メレナティレから脱出する時、すでに移動を始めていたもの。」
「それはまずいことになった・・・。
シェブロン先生が教えてくださっただろう?」
「『長老の木』ね。」
二人は魔族の狙いが「長老の木」であろうことを、この時から気付いていた。
「無事に先生をお迎えできたら、ぼくはオルブームに行きたいって、みんなに言ってみる。」
「その時はわたしも一緒に・・・!!」
手を取り合って誓い合う。
いつからか、同じ決断をする時にはそうするようになっていた。
「城の近くへ戻ろう。
今戦うべき相手は魔族ではなく、行く場をなくしたメレナティレ兵、王国兵たちのようだ。」
「またたくさん、味方を作るのね。」
ファラはにっこりと笑った。
最も危険な敵であるテンギの捜索をファラとフィヲに託したルアーズたち3人は、旧セト国シャムヒィを共に旅立った仲間たちと合流していた。
コダリヨン、ラゼヌター、メッティワ、リルー、オオン、ジシュー、そしてズンナーク。
彼らがフスカ港からリザブーグへ向かう途中、道を阻んだ機械兵や王国兵との戦闘を引き受けてくれていたのだ。
皆、旧セト国の将軍として、一度は剣を交えたことがある。
森に潜伏中の王国兵は「ゼネラル(司令官)」を中心とした隊列で行動していた。
軍人である彼らは、王都の落城を信じられず、リザブーグに築かれたLIFEの拠点を攻撃せよ、という最後の命令に従って動いているのだ。