第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
電光が走り、割れるような雷鳴が轟いた。
その瞬時に映し出された世界は、翼竜の群で埋め尽くされていた。
襲い来る幾多の竜を剣で斬り伏せる。
アーダも共戦する。
そこへ悪魔ヌゾード=ゼンが現れた。
クザロ=ケケの大槍を携えて。
鋭利な先端を赤く染めた血はヒユルの凄惨な最期を思い出させる。
ヱイユは髪を逆立たせ、鬼神の如き形相に変わった。
「よく聞け小僧、お前はあと・・・。」
死の宣告である。
あの時と同じだ。
しかしヱイユの怒りは天をも貫くほどだ。
ひるみもしないのを見て、ヌゾード=ゼンは汗を滲(にじ)ませた。
「・・・秒後だ。」
その言葉は激しい雷鳴で掻き消されてしまった。
「もう一度言う・・・。」
「おう、言ってみろ。」
悪魔の頭領のプライドは、ヱイユの態度を許さなかった。
大小幾百のドラゴンたちが一斉に襲い掛かってきた。
同時に、ヱイユの背後に巨大な翼が現れる。
はじめ真っ黒だったその翼は、みるみるうちに金色に変わっていった。
ヤコハ=ディ=サホの支配者である。
翼の力によって、右から左から、旋回する風が起こって竜たちを巻き上げ、上空へ吹き上げた。
人間からすれば巨大生物である竜を、ミミズか何かのように捕らえては飲み込んでしまう。
ヱイユの標的は悪魔ヌゾード=ゼンだけとなった。