The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 40 話
前へ 戻る 次へ

ヨムニフら「闇の一族」の首領たちはヱイユの誘いに乗るほど愚かではない。

彼らの狙いは「長老の木」だけなのだ。
徒(いたずら)に勢力を損なうような判断は元より下さない。

ただ、挑発されて黙っていることのできない連中、主には竜族、は放っておいた。
止めることすら無駄だと思っている。

酒に酔ったエモラヒとヨムニフはどんちゃん騒ぎだった。
竜族の暗愚を見て、腹が捩(よじ)れるほど笑い転げていた。

また、ヱイユをひどく侮辱して嘲(あざ)笑った。

「あの糞餓鬼(くそがき)め、蝿どもにたかられて、死んででもくれたら、どんなに気分がいいだろう!」
「糞でなけりゃあ、あんなにハエがたかったりはしねえさ、げっひゃっひゃ!!」
「ぶはっ、ぶははははっ。」

大群が飛び立ってもなお、彼らの中枢は何事もなかったかのように宴を続けたのだ。

「もはや奴に逃げ場はない。
羽根蛇ども(=ドラゴン)とやりあって死ぬか、ここまで来たところで物の数ではない。」

ヨムニフはヱイユが来ないものと思っている。

一方のヱイユは、アーダが小竜リールを呼んだことで、他の竜族にも居場所を知られて襲撃を受けることは覚悟の上だった。
情報収集にリールの力をどうしても借りたいのだ。

そしてヤコハ=ディ=サホの魔の本陣へ単独で攻め込もうとは考えていない。

この点、敵に読まれているのである。

相手がどう出てくるか。
双方とも窺(うかが)い合っている状態といえた。

『シェブロン先生に無事リザブーグ宮へ入っていただくまで、ここは俺が引き受ける。』

彼は、魔族の連中がなぜ、ヤコハ=ディ=サホ以北へ侵入しないか分かっていた。
母なるアズライマから生み出されるエネルギーは本来“LIFE”であり、彼らがその力を扱うには、星という「天体」の大生命力に逆らわなければならない。

そんなことは到底できないだろうというのが常識的な考え方である。

しかしヨムニフらの思惑(おもわく)はヱイユより一歩先まで踏み込んでいた。
擬態師エモラヒの眷属である森の獣たちを使い、「長老の森」へ侵入しようというのだ。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.