The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 37 話
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相変わらず灰竜アーダは丸くなって、ヒユルとヱイユを抱いていてくれた。

ヱイユはヒユルの手に触れ、忘れていたようにその冷たさ硬さに驚いた。

眠ったようではある。
しかし彼女の上で生きていた、悪意のない攻撃性、自己顕示欲、排他性と独占願望、内に秘められた寂寥(せきりょう)感。
そうしたものはどれも失われてしまった。

「長老の木」は少しも衰えることを知らず、数千年の時の中を生き続けていた。

この木の下で、どれほどの“生命”が生まれ、死んでいったことだろう。

緑色の光は世界を包み、森を満たし、ヱイユの上にもヒユルの上にも平等に注がれている。
もちろん灰竜アーダの上にも。

もう全回に近かった。

ヒユルはとうとう戻らなかったのだ。

彼はヒユルの身を起こして抱擁すると、この、美しい姿で生まれ、運命に翻弄されて儚く散ってしまった娘の額に、優しく、そっと接吻を与えた。

微笑みが溢れ出す。
温めきれなかったその体が不憫でならない。

彼は以前ここを訪れた時、美しい花が咲いていた、陽のあたる土壌の上に彼女を寝かせると、素手で穴を掘った。
汗が滲んでは、滴った。

ヒユルのために花を飾ってやろうとは思わなかった。
可憐な花の生命を摘むことは、今の彼にはできないことだ。

彼女が埋まった土の上にうつ伏してしばらく哭いた。

「お前と話ができるまで、許してもらえるまで、今度は俺からお前を呼び続けるよ。
ずっと探し続ける。」

顔にも土をかぶせた。

彼女の最後の表情は不思議と明るく、紅がさしたように見えた。

すっかり見えなくなると、アーダも声を出して哭いた。

自分だけの悲しみでないのを知った彼は、励ますように言った。

「あの瞬間から、俺はヒユルの“生命”によって生きている。
彼女は俺の中で生きていてくれる。
“LIFE”に生ききることでのみ、託された“生命”の重みに報いることができる。
・・・なあアーダ、そうだよな?」

ドラゴンの大きな瞳から、大粒の涙がボタボタと流れ落ち、悲哀を吹き飛ばすような声が発せられた。

「一緒に行こう、ヒユル!
俺が守る“LIFE”こそ、お前が“生命”を賭して守ってくれたものに他ならない。
・・・そのことを証明するために!!」

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