第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
そこら中から、ひっきりなしにゲラゲラと嘲笑が起こっている。
エモラヒは舌なめずりしながら顔を歪ませた。
ニヤけているのである。
「おい、お前。
あそこに入りこんだことはあるか?」
そう言ってヨムニフは北に広がる森を指差した。
なおも顔を歪ませて、エモラヒは長い髪を揺すった。
麓の森の辺りで地鳴りがしている・・・。
急に、声を裏返らせてヨムニフが笑った。
「地神が怒っているらしいぜ。
・・・天の神は逃げて行ったがな、ぎゃっはっは。」
天神とは迦楼羅のことを言っている。
「大地に神あり、僻地に土人(どじん)あり。
うひゃひゃひゃ・・・!!」
ガクガクと背中を波打たせながら、ヨムニフは笑い転げた。
「・・・あぁ、はあ、おかしい!
・・・ありゃあ地響きか、土人どもの地団太か、ぐっひゃっひゃっひゃ・・・。」
グスッと、エモラヒは鼻で笑った。
それを聞いてヨムニフは更にツボにハマってしまった。
「・・・ふわぁ、はぁ、ところでなあ、・・・がっはっは、どうなんだ、お前、ぶはっ、あそこへ、・・・あそこへ、入れやしねえか。」
エモラヒは両目にかかった前髪をどかそうともせず、じーっと森に見入った。
ヨムニフはなおエモラヒの肩に手をかけて笑い続けていたが、ようやく収まってきたらしく、話を切り出した。
「・・・あそこから吹き出してくる魔法エネルギーは、オレたちを寄せ付けない、不快な色をしている。
つまり、シェブロンが好んで使うようなやつさ。
・・・うああ!
考えただけでもむしゃくしゃする!」
聞いていたエモラヒもぶるぶるっと震え、自らの首を掻きむしった。
「・・・なあ、あれに手を加えてやれば、吹き出す魔力の性質はオレたちの自由にできる・・・!!
ウジ虫どもからエネルギーを根こそぎ奪い取って、飢え死にさせてやらねえか。」
こう言って互いに見合った時、割れるような狂気の哄笑が起こり、闇夜に響き渡った。