第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
王国港ミナリィとリザブーグを結ぶ道は、ロマアヤ艦隊とLIFE騎士団によって守備の態勢が整えられた。
ザンダの一団が馬で先導し、師シェブロンの車を護送する。
両翼の守りもがっちりと固められていた。
沿道もさることながら、逃げ散った王国兵を野放しにはできない。
ナズテインの作戦は、彼ら全てを捕らえてリザブーグへ連れ帰ることだった。
軍事施設を失った港はロマアヤの船、メビカの船、ウズダクの船でいっぱいだ。
船乗りたちは一部の兵士らとともに船を守り、港を守っている。
また、すでに小型船を使って本国に知らせを出していた。
ロマアヤ公国の留守を預かる騎士ルビレムに、ミナリィへ食糧を運んでもらうためである。
それは軍務に携わってきた者たちが失った生活に対する一時的な補償だ。
無事にシェブロンを送り届けた後、王国内に留まってLIFE戦線に加わる者もいるが、本国へ帰る者も当然いる。
リザブーグから新旧騎士団に交互でミナリィへ入らせ、守備を固めるとともに、復興を進めていくことになろう。
横暴な権力の軍事拠点という、進路を一度は誤った都市を再びよみがえらせるのである。
そこに暮らす人々の生活を、そして人生を考えるならば、正しい再建がどうしても必要だ。
ロマアヤ伝統の「魔導騎士」の称号を受けたザンダとルビレム直属の騎士や兵士たち。
馬で先導する彼らを、後ろの馬車から眺めつつ、シェブロンは護衛騎士ノイと話した。
この最重要の護送に当たる御者は老ムゾールである。
「我々がルング=ダ=エフサにいる間に、王国はずいぶんと変わったな。」
「はい。
LIFE騎士団が本当によく育ってくれました。」
「世界中、多くの騎士が今LIFEを守ってくれるようになった。
全ての因は、LIFE騎士の先駆けである君と、ツィクターさんの献身にあるんだよ。」
ツィクターが悪魔結社マーラとの戦いの末、ファラをミルゼオ国へ逃がしてアミュ=ロヴァ近郊で果てたという話は伝え聞いている。
ヱイユが墓所に参っているし、ファラはツィクターの剣を受け継いだ。
「父君も母君もご立派でした。
ツィクターさんと共に駆けたリザブーグの街路という街路に、LIFEの味方が溢れる時代になろうとは・・・。」
ノイは感慨深かった。
それから二人ともムヴィアを偲んだ。
「彼女は数年前まで王国の魔性を抑え続けてくれていたようだ。
LIFEのみならず、王国も隣国も皆、彼女に守られていたのだ。」
「そのご子息が“LIFE”を継ぎ、戦っているとは・・・。」
左右の道に時折、喚声が上がる。
壊滅的な打撃を受けてなお、王国に与(くみ)する古い騎士らの残党が襲い掛かるのだろう。
しかし軍師スヰフォス直々の薫陶を受けてきたナズテインの布陣は完璧であった。
どのような敵にも、同じ騎士として剣で語り、言葉で語った。
事実、味方となる王国兵は多かった。